地下牢に閉じ込められたわたしたち
「ねぇ、やだ。こわい、やだ」
暗いところや怖いところが得意でないわたしにとって、地下牢の暗闇はただただ恐怖心を煽られる。
だから隣にいるわたしと似たような人、美穂さんにしがみついた。
「大丈夫、大丈夫だからお姉さん」
それを察したからなのか、美穂さんは優しく私の背中をさすってくれる。
薄暗くても、美穂さんが少し不安そうな表情をしているのが分かる。きっと私に不安を煽ったらいけないと思って我慢しているんだと思う。
「なんで入ったこともないこんなところに入ろうとしたのよ」
語気の強さで美穂さんが怒っているのも伝わる。
でもそんなことを言いながらも背中をさすり続けてくれている優しさ、それが美穂なんだ。
冷たい地下牢に閉じ込められてから数分。
ゴボコボッと音のする方を見ると、どこから溢れ出てきたんだという水が地下牢の床な溜まり始める
「え?…美穂さん!水、水が…」
どうして?水?水が溜まり始めてることにパニックになるわたし。
「水…溜まってきた」
溜まってきたぁ!だなってなんと呑気な。
次第に溜まり始める水。気づけばお腹の辺りまで水が溜まっていたのだ。
「さ、さむい…さむ、、み、みほさぁ…」
あまりの水の冷たさと、突然の出来事にわたしはパニック。目を開けていると開けてくる水平線のような水たまり。
「!!お、お姉さん!しっかり!!」
そんな美穂さんの声もだんだん遠くなっていくような感じ。
そんなことを気に留めるわけもなく水はみるみるうちに胸あたりを超えてきた。
いよいよだ、いよいよ。
「お姉さん!お姉さん目を開けて!…し、しっかりするのよ」
あまりの冷たさと驚きで、意識を失いかけているわたし。
わたしを揺さぶる美穂さん。あぁ、なんだか心地がいい。水の中にひったひたに浸かっているのに心地よくなってきたわたし。
美穂さんの慌てぶりに少し心が躍った。
「ダメよ、お姉さん!しっかり!!」
あわてる美穂さん。よかった、それでこそ美穂よ。
わたしのために慌てふためく美穂さんを見てご満悦なわたし。
「カット!!以上!!!美穂さん、ありがとう!!地下の水出しさんもありがとう!」
カットの声をかけるわたし。キョトンとする美穂さん。そして、徐々にひいていく水。
地下牢の壁に向かってか、誰に向かってか声を上げる。何が起こったのという表情で私を見る美穂さん。
それもそのはず、こんな大胆な仕掛けをしたのはわたし。
地下牢の寒さは計算外だったので、水が溜まり始めた時は本当に死んじゃうんじゃないかしらと思って意識が飛びそうだった。
「…なに?なによこれ。なんなの?」
「え?ふふふ、私がピンチの時美穂はどうするドッキリよ!」
「…は?」
そりゃそうなるわよねという表情の美穂さん。
「お姉さん、やり方が雑すぎるわよ」
たしかに美穂さんのいう通り、仕掛けは雑だ。
美穂さんを無理やり誘って地下牢に自ら入り込み、外から鍵をかける。そしてその後ちょっとした隙間からホースをねじ込んで水を投入。なんと大胆かつ雑なんだろうか…わたしでもおかしな話だと思ってる。
でも美穂さんを試したかった。その一心で見事にやりきったのだ。
「まぁ、いいわ。出られるよね?」
「そうよ!私が仕掛けたんだもの。」