「あ~!ムカつく!!なんでアイツなの!!」
今日も独り、部屋で吐き捨てるのは
一つ上の兄の悪口。
絶対に僕の方が勉強出来るのに!!
ムカつくムカつくムカつく!!
「まただ。」
2階からドンドコと物に当たっている音がする。
元凶は一つ下の弟だろう。
何か言われたのだろうか。
そういえばテストの結果が貼り出されている頃、つまりはそう言うことであろう。
「兄弟で切磋琢磨出来るって素敵だよね。」
思わず笑みが溢れる。
「ぜ~ったいに、
負けて上げないんだから、あはは!
さいっこう……。」
体が震えた。
優越感に浸るより、
劣等感を持っていた方が成長出来る。
そう、信じています。
これまでずっと我慢してきた。
ずっと笑っていて欲しくて
何処かの誰かのように道化を演じてきたの。
貴女は私みたいにピエロになったけど
熊に襲われちゃったのは可哀想ね。
周りの大人は私を指差して泣いていたわ。
どうしてかしら、
貴女が私にピエロになってみたいって
言ったんじゃないの。
私は悪くないわ、
ただ貴女がピエロになって
笑ってくれるならと思ったの。本心よ。
でも、
動物たちは私と違うことを思ったみたい。
ほら、よく言うじゃない?
動物は本心を見抜くって。
私、貴女の人を嘲笑う為の高笑い
大嫌いよ。
LINEの通知音が鳴る。
今日はずっと片想いしていた相手と
放課後に遊ぶ予定をしているのだ。
姉ちゃんに色々聞いたけど
結局なにもしない方が良い!で話が終わった。
早くLINEを返したいなぁと
机に立てた肘に顎を乗せれば先生と目があった。
あれ、今って授業中……?
拝啓未来の彼女様、
今日の予定は少し遅くなりそうです。
待たせるなんて、ダサいけど
必ず埋め合わせはします。
ごめんなさい!
目が覚めると
其処には真っ白な原稿用紙。
耳に音が届いた。
スマホの画面には担当者の名前が出ている。
はぁ、終わった。
折角任された仕事だったのに。
そのまま寝てしまったのだろう、
左手にはインクがついている。
「正」という文字に見えなくもないが
そんなことはどうだって良かった。
頭をゴン!と机に打ち付ける。
もうどうにでもなれ。
段々と意識が遠くなる。
目が覚めると
其処には真っ白な原稿用紙……。
私の当たり前。
何時も通りの時間に起きて、
出掛けて帰ってきて、
一息ついたら筆を持つ。
こんな何気ない毎日が幸せなんだろうな
なんて考えていると自然と口角が上がる。