『ただ君だけ』
君にあげられるものは何も無いけど
君にあげられないものも何も無いんだよ
このおかしな矛盾は
何も持っていない私が
君にあげられる言葉
ただ君がそこにいるだけで
全ての意味が満たされる
「風と」
どこかの木の枝から
私の家の玄関まで
風に吹かれてはるばる
花びらがやって来た
いらっしゃい
小さなお客さま
少し休みますか?
それともまた旅に出る?
スカートの揺れに合わせ
君は踊るように答える
ふぅぁ…
ひらっ…
はらっ…
貴方が私にくれたのは
絵に描いたような白い花
喜んで受け取るのは癪だから
花に罪は無いなんて言い訳をして
嬉しさを隠して受け取った
花弁を一枚千切って、好き
もう一枚千切って、嫌い
好き、嫌い、好き、嫌い、好き…
終わりの来ない花占いの
答えなんて本当は知っている
きっと花言葉まで調べて
この花を選んだ事も知っている
欲しいのは花束なんかじゃない事も
きっと貴方は知っている
だから貴方のことが好きで、嫌い
『好きになれない、嫌いになれない』
『ふとした瞬間』
いつもと変わらない何でもない日の
いつもと変わらない暮らしの中で
ふとした瞬間に遠い誰かを思い出す
それは遠方に越した友人や
別れたかつての恋人や
旅先で一度だけ話した人や
離れて暮らす家族や
昔飼っていた犬や鳥や
もう会えない人だったりする
そんな時、私は少しだけ手を止めて
その思い出を矯めす眇めつ眺める
どの思い出も今の私を形造る
大切な記憶だと再確認して
支えてもらっていた事を思い知る
すると頭の斜め後ろの方から誰かが
私を見守っていてくれる気がして
なぜかとても心強いような気持ちになる
そんなふとした瞬間の後は
誰かに恩返しするように
いつもより少しだけ頑張れる
『どんなに離れていても』
寂しがり屋の私のために
貴方がしてくれた約束
離れて過ごす夜は
22時にお月様を見て
お互いの事を想う
普段はそっけない貴方にしては
随分とロマンチックな約束は
私の心の支えになって
どんなに遠く離れていても
隣にいるような気がする
どんなに遠く離れていても
大丈夫だと強く思える
今夜も22時、私は窓の外の月を探す