私だけ
そう思っていた。信じていた。
彼からの愛情を一身に受けるのは、私だけだと。
けれども、違っていたようだ。
……まぁ、それもそうか。貴方にとって、私は所詮ただのペット。手のかかるだけのネコなのだから。
でも、それでも……浮気じゃないか、他のネコを触るだなんて。
私だけでいいと言ったのに。
罰として、暫くは無視してやろう。触ろうものなら猫パンチも辞さない所存だ。
さぁ今回は何日で謝ってくるだろう、あの浮気性の彼は
遠い日の記憶
遠い日の、記憶……
そんなの、思い出そうとしたって、思い出せない
そもそも思い出さなくていいのかもしれない
今の状況を見るにいい思い出だったとは言えないだろうし、思い出したところで意味もないだろう
─────でも、ただ、一つだけ。
気になることがある
昔、本当に遠いあの日、誰かが……僕に優しくしてくれた……気がする。
それが誰だったのか、なんのために孤児であった自分に優しくしたのか、思い出したい。
あぁ、あれは……一体誰だったのだろう……
そんな終わりのない答えを問い続けながら、今日も救いのない一日が始まる。
空を見上げて心に浮かんだこと
きっと、センスのある人や感受性豊かな人ならただ空を見上げただけで、人の心を動かすようなことを言うのだろう。
だが僕は違う。
センスなんてない。ましてや感受性もある訳じゃない。
脳みそすっからかんの、ただの馬鹿だから。空を見上げても、わー、青い…とかしか思い浮かばない。
でも、それが悪いわけじゃないだろう?心に浮かんだこと、なのだから。
よく、少し無茶をしてセンスがあるように見せる人を見る。なんでそんな事するんだろうなぁ、僕は不思議で仕方がない。
まぁそんなことを考えても無駄だろう。分かりゃしない、なんせ馬鹿だから。
そんなことを考える暇があったら、早く昼寝でもしてしまおう。あぁ、昨日は夜遅くに寝たからな…ねむい、ねむい………
終わりにしよう
そう、彼が告げた。
いや、嫌だ、やめてくれ、お願いだから…
そう言っても、彼はにやりと笑って、終わりにするつもりのようだ。
─────結果、全財産を賭けたトランプ勝負、勝敗の女神はどうやら彼に微笑んだようだった。
手を取り合って
最後まで生きていこう、そう誓った。
嬉しかった、心の底から。
…でも、貴方は
守ってくれなかった、この約束を。
…なんで僕ひとり置いて逝っちゃうかなぁ…?悲しいなぁ……でも、恨めない…
先に、いなくなってしまうこと、本当にごめんなさい。許してくれとは言いません。だから、お願いだから────私を、忘れないで
だって、こんなの見たら、恨めないじゃないか。
全く最後の最後まで、貴方はずるい、ずるい人だな