視線の先には
「ねえ、」と呼びかけたら、
「どうしたの?」と柔らかく尋ねてくれる。
でも、あなたの視線の先に居るのは、
私ではないね。
知りたくなかったよ。
目は口ほどに物を言うなんてこと。
未来
過去より未来を知りたいと思っていたのは、
きっと幸せな未来があると信じていたから。
そんな保証なんてどこにもないのに。
この頃は未来を知るのは怖くなった。
私の手に負えない不幸な未来を知ったなら、
その日から平穏な毎日を過ごせるとは思えない。
好きな本
昔から本が大好きな子どもだった。
本があれば何も要らないと思うくらい。
だから好きな本はどれ?という質問はとても困る。いっぱいあり過ぎて、答えられないからだ。
その好きな本がまったく読めない時代があった。
およそ10年。
仕事しながら、妊娠、出産して、子育てをしていた時。
本を読みたいという気持ちさえ無くなって、
それが寂しいとも、
そもそも本を読んでいないことさえ気づかなかった。
何年か過ぎて、初めて気がついて、
あれ? 私、このまま本を読まない人になるのかな?
…それも仕方ないか、と諦められるほどだった。
きっかけはわからないけれど、
子育てが一段落した頃から、少しずつ本が読めるようになり、今はまた読むことを楽しんでいる。
物語に没頭する、
懐かしいあの感覚が戻って来た。
本は私を忘れていなかったんだ。
久しぶり、また会えて本当に嬉しいよ。
あいまいな空
行こうか、どうしようか?
駅前のロータリーで見上げた空は、
白っぽい灰色の空。
明るいような、じきに雨が降ってくるような、
迷うわたしのような、あいまいな空。
あじさい
降り続く雨、気が滅入りがちな時期。
蒸し暑い街を歩けば、
その豪華な花房に、ぱっと目を引き寄せられる。
昔からの素朴なあじさいもいいけれど、
いろいろ増えてきている
新しいあじさいを見つけるのが、
とても楽しい。
いまのお気に入りは、
墨田の花火の繊細な彩と八重の額、
柏葉アジサイの大きくて白い花房。
雨に濡れて冷んやりとしたあじさいを
腕いっぱいに抱えてみたら、
どんな気持ちになるだろう。