逆光
光あふれる美しい景色と一緒に、
あなたを撮りたい。
あなたは日射しがよく似合うから。
でも私が光に惹かれて、
近づこうとすればするほど、
あなたは逆光で暗くなり写らなくなってしまう。
私が光に背を向けた時、
初めてあなたがはっきり写るなんて、
なんだか皮肉ね。
#156
こんな夢を見た
昔、職場の先輩だった女性に、
「〇〇ちゃんの結婚式の夢を見たよ」と言われたことがある。
ぎょっとした。
「ど、どういう夢だったんですか!?」
彼女と私は特に親しかったわけでもない。その時の私にそんな相手も予定もない。なのになぜ?
私が驚いて尋ねても、彼女は笑うだけで相手も内容も教えてくれなかった。何かの予知夢の類じゃないだろうなと、しばらくは気味が悪かった。
一体どんな夢を見たんだろう。彼女は私のことをどう思っていたんだろう。かなりインパクトのある言葉だった。あれから随分経つけれど、今でも時折思い出す。
#155
タイムマシーン
「タイムマシーンがあったらどうする?」
子供みたいにあなたは笑う。
「そうだね、やっぱり未来が見たいかな」
地球はまだ青いかとか、
誰でも月旅行ができるかとか、
太陽系の外に出られるかとか、
光の速さを超えて時を飛ぶ、まだ見ぬ未来を二人で想像した。
でもね、
もし目の前に真新しいタイムマシーンが現れたとしても、あなたを置いて乗ったりしないよ。
どんな素敵な未来でも、
あなたがいないとつまらない。
グラスのスパークリングワインの泡が光を弾く。
こんなひとときには敵わないもの。
#154
特別な夜
初めからわかっていれば、
ありふれた夜になどしなかっただろう。
あの夜を僕は。
失くしてから気づいて、
どれだけ悔やんでももう帰っては来ない。
あの特別な夜は。
あれから時は流れたけど、消えないんだ。
君の笑顔が瞼の裏に、
君の声が耳の底に、今も。
ずっと、いつまでも。
#153
海の底
誰も知らないところへ行きたい。
例えば海の底はどうだろう。
深く深く沈んでいったら、
真っ暗できっと静かだろう。
何も見えなくていい。
目も耳も無くなっても、
あなたに触れていられたらいい。
#152