冬休み
子どもの頃の冬休みは、楽しいことがいっぱいだった。
まずはクリスマス。ケーキを食べて、靴下を吊るして、サンタさんからのプレゼントをわくわくしながら待っていた。どうしてサンタさんは私の欲しいものがわかるのかな? いつも不思議だった。
それから年賀状を書いて、しぶしぶ窓拭きをして、紅白歌合戦を見ながら年越しそばを食べる。
お正月になったら初詣での屋台が楽しみだし、何よりスキップしたくなるくらいお年玉が嬉しかった。
いま、私の冬休みはとにかく忙しい。
毎年追われて追われて、何とか新年を迎えたら、あっという間に三が日が終わる。
あーあ、ゆっくり温泉にでも行きたいなあ。
#133
手ぶくろ
お父さんの黒い手ぶくろを、
こっそりはめてみる。
大きい。
指が余ってるし、手のひらだってぶかぶかで、
全然合わない。
やっぱりお父さんの手は大きいんだ。
合わないことが嬉しかった、小さいわたし。
#132
変わらないものはない
十年以上通っていた美容院が、この秋で閉店してしまった。
女性二人でやっていたお店で、私の家から近いし、話題にも困らなくて、とても居心地が良かったし、ずっとそこにあるものとすっかり安心していたから、かなりショックだった。
変化はあった。まずこの夏に私をずっと担当してくれていた美容師さんが辞めた(お別れも言えなかった)。その後は店長さんが一人で頑張っていた。前に行った時、店長さんはかなり痩せていて、「病気じゃない」と言っていたけど、やっぱり体調が良くないのか。そう思って、恐る恐る店を閉める理由を尋ねてみると、地方に移住すると言う。
(移住!?)
四半世紀続けたお店を閉めて、五十歳(だそうだ)から新たな場所でリスタートする。
店長さんの陽気な笑顔の下で何があったんだろう。どんな思いがあったのか。
心配になったけれど思い直した。
大人になってからの人生は、短いようで結構長い。変化が欲しいと思うなら好きにしてもいいじゃない。一度きりの人生だもの。
彼女には美容師としてずっと働いてきた腕があるし、健康さえ気をつければ、どこでもやっていける人だろう。
変わらないものはない。
その言葉には何となくマイナスのイメージを持っていたけれど、まだ変わっていけると新しくとらえ直そう。
そして彼女の次の挑戦が充実したものでありますように。
#131
クリスマスの過ごし方
「プレゼントがあったよ!」
クリスマスの朝はその声から始まる。
さっそく包装を開けている背中に、
「そろそろ今年でサンタさんも終わりかなあ」と声をかけると、
「高校生まで来て欲しい」と言われて絶句した。
特別なことは他に何もないけれど、
今日のおやつにはイブに一緒に作ったホールケーキの残りを食べよう。
デコレーションは歪んでいても、生クリームにチョコ生地、苺とバナナをたっぷり使ったその美味しさに顔を見合わせてにっこりする。
後はあなたが頑張って練習していたホール・ニュー・ワールドを弾いてくれないかな?
そしたら最高のクリスマスだ。
こんなクリスマスの過ごし方は、あと何回できるんだろうね。
#130
イブの夜
イブの夜、0時を過ぎたら、
わたしはサンタになって、
眠る娘の部屋のドアをそっと開けるだろう。
密やかなメリー・クリスマス🎄
#129