NoName

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10/30/2023, 4:15:09 PM

懐かしく思うこと

何事もない穏やかな午後。
言い換えればそれは何の変哲もないいつもの退屈な時間だ。
異世界に召喚されて冒険に出たり、学校中を揺るがすような大事件に巻き込まれたり、そんな漫画や小説のような特別な出来事は起こりそうになかった。
「ユウちゃん、今日を特別な日にするにはどうしたら良い?」
あまりにも退屈で目の前の親友に解決策を求める。
「何?突然」
「だってもー何もないじゃん」
何かない?何か!
そう詰め寄ると親友は呆れたようにため息をつくと、仕方ないなぁ、とでも言うように何か思案を始めた。
外は雲一つない青空が広がっている。
グラウンドから野球部の掛け声が聞こえてくるし、隣の校舎からは吹奏楽部のブォーという楽器の音が聞こえてくる。それらを聞きながらぼんやりと窓の外を眺める。
「そうだねぇ、そうしたら10年待とうか」
「なにそれ」
「今日を特別にする方法。まぁ特別にはならないかもしれないけど10年経ったらきっと今日は好い日になるよ」
そう言って親友は笑った。

私はなんて返したんだっけ?
覚えてない。覚えてないけど、10年以上たった今もふとあの日のことを思い出す。

10/29/2023, 4:21:41 PM

もう一つの物語

貴方の隣。
そこが居場所になったかもしれない。
二人で笑い合うこともあったかもしれない。
悲しいことがあれば慰め合って、そうしてまた前を向くこともあったかもしれない。
あり得たかもしれない、未来。
けれどももうあり得ない、未来。

遠ざかる貴方の背中を見つめながら、拳を握りしめた。