手を取り合ってゴールだなんて笑っちゃう
【たとえ間違いだったとしても】
君と話せる数分を夢見てしまうよ
【逆光】
小学3年の頃だっただろうか。
夏休みになり、友達と遊ぼうにも遊ぶ約束を立てる事が中々難しかった時代。
僕は1人、近所の駄菓子屋に500円を握り締め、いつもより贅沢に買い物をしようと意気込んでいた。
ざぁっ
いつもより大きく聞こえた風の音に、夏の暑さが一瞬和らいだ気がした。
はて、こんな小道があっただろうか?
風に意識が向いたから、普段通る道から見つけたことのなかった道が伸びていた。
せっかくの夏休みだ。
宿題の夏休みの日記に書く内容だって、見つけなければいけない。
冒険心が疼き、僕は方向を90度曲げて元気よく腕を振ったのだった。
夏なのに木が並ぶと涼しく感じるもんなんだと子供ながらに感心して、目の前に現れた長い階段にも臆する事なく足をかける。
風が背中を押す様に吹くため、長い階段のはずが登り切っても清々しい気分で汗もかいていなかった。
登り切った先には大きな木が一本立っていた。
ざりっ
小さく地を踏む音がした。
周りを見ても自分以外には誰もいない。
ひゅっと周りの空気が張り詰め、ドロリと重さをもつ。
(帰らなきゃ…!)
何故かわからないがそう感じた。
木から後ずさる様に距離をとり、
一歩、
二歩、
三、
四…
勢いよく振り返り、登ってきた階段を駆け降りようとした……つもりだった。
ぐいと引っ張られた腕の勢いで再び視界が振り返る。
その先には逆光なんだと言い聞かせるしか出来ない、黒く、顔の見えないモノが僕の腕を掴んでいた。
「ひッ……」
咄嗟に何かを押し除けようと、手のひらで何かの体を押せば僕の体は宙に浮いた。
スローモーションに見える視線の先では、僕が握りしめていたはずの500円玉は拾い上げられ、黒い顔の中央にある真っ赤な穴に飲み込まれた。
【特別な夜】
キラキラしたおへやのかざりつけ
ママにきょうまでもっていてもらった
あかくておおきいくつ下
うん。サンタさんへのてがみもちゃんとはいってる
パパとママにおやすみなさいを言ってからふとんをかぶる
サンタさんにちょくせつおねがいってつたえるんだ
【海の底】
沈みたい
沈めない
寝転びたい
眠りたい