どこへ行こうかを考える
けれどどこへも行きたくないのだと気付いていた
気付かないフリをしていただけで
私はどこにも行きたくないのだ
本当は動きたくさえない
かろうじて息を止めないだけで
何もしたくない
どこにも行きたくない
それくらいには
心が止まりそうだ

大きな愛を抱えて
一人で生きていくには苦しすぎるから
それを注ぐ相手がいてよかった
ひとりきりじゃなくてよかった

ささやきが聴こえる
風のささやき
星のささやき
文字のささやき
私の心に直接囁いてくるそれは
酷く優しく嘘のないものだった

星明かりを頼りに夜道を歩く
夜は暗いけれど
点々と輝く夜空は明るかった
心に優しいほどに綺麗だった
夜空を見上げて吐息を漏らす
それは夜に星と共に溶けていった

影絵を探す
影は目に見えるものだから
影絵も人が作るものだろうと
それは安易な考えから
影絵を探した
けれど探しているのに見つからない
影絵を作る誰かがいなければ影絵は見つからない
それさえ分かってはいなかった
目の前にある影絵は
目の前にない影絵は
一体誰が作るものだろう