酒場で時を渡り歩いているなんて話しかけてきた旅人がいた。
タイムマシンというものを使って過去や未来に行くと言っていた。

どうせ酔っ払っているのだろうと聞き流していた。
信じていないな？と旅人は笑う。
彼は鞄からふたつのガラスケースを出した。

太古の海に想いを馳せる貝。
月で育てられた枯れない花。

貝は遠い遠い昔から持ってきて、未来では人類は月に住んでいると言った。

それからこの世界の未来を語り始めた。
数年後に致死率の高い感染症が流行り、
この世界の人口1/3が命を落とすと言っていた。
そして人類が絶滅すると。

旅人はふたつのガラスケースを鞄にしまい、
もし君が生きていたならまた会おうと言って姿を消した。

はっ、と目が覚めた。
ハハハ、なんだ夢だったか…。

ハクション！
村で誰かがくしゃみをしている。

#もしもタイムマシンがあったなら

なにが欲しいと訊かれても欲しいものは無かった。
だって目の前にあるから。

#今一番欲しいもの

遠い日の記憶の扉を開けた
むせかえるような緑の香り
大地を焦がすような陽射し

そこには古い墓があった
ああなんということだ
墓に刻まれた名前は
私のものだった

#私の名前

真夏の夜
ぱちぱちと弾ける線香花火
ふたりでひっそりと

そっときみに視線を移すと
目が合った
一緒に笑った

#視線の先には

麗しの君よその白い腕で私を抱きしめておくれ
麗しの君よその薔薇色の唇で接吻をしておくれ
麗しの君よその琥珀の瞳で私を見つめておくれ

秘密の夜のもと 月の下でワルツを踊ろう
ああどうか私だけを見ておくれ

#私だけ