「ココロ」
小さい頃から「どんな物にでもココロがあるんだよ」そう言われて育てられた。ココロは人にはもちろん、小さな人形やお米、本など、様々なものにココロはある、私はそう信じている。だから私はどんなものも大切にした、誰かのココロに愛を与えるほどその愛が返ってくると誰かが言っていたから。大人になっていくにつれ、物をぞんざいに扱う人が増えていった、時には「そんなこと信じてるの?」と、言われたこともある。それでも私はものを大切にする。
「星に願って」
私は星に願った。母を返して欲しいと、また会わせて欲しいと、星に願った。そんな事をしても意味は無いと言うことは今なら分かる。いや、分かっていたのかもしれない、分かりたくなかっただけなのかもしれない。ただ、その時は母と会いたかっただけだ、それだけだった。ある日母が見当たらなくて探しても探してもどこにもいない、ただ疑問に思った私は父に「お母さんはどこにいるの?」と、どこかで聞いたような事をきいた、すると父も「お母さんはお空にいるんだよ、お星様が連れて行ってしまったんだ。だから、もうしばらく会えなくなっちゃったんだ」とどこかで聞いたことがあるようなことを言った、私は父のその言葉をイマイチ理解できなかった。だって、家中を探したら母がいつもと変わらない笑顔で出てくると思ったから。やはり子供というものは母親というものが必要なのかもしれない、私は父の話を聞いて少し不安になり母に会いたくなった。だけど、家中を探しても母が見当たらない、そこで実感した、母は居ないのだと、私は泣きじゃくった、母に会えないと分かってしまったから。母が居なくなってからは家の中が以前とは比べようのないくらい寂しくなった、父は以前より仕事熱心になった、以前は仕事を適当にこなしていた訳では無い、恐らく母が居なくなって悲しいのを紛らわせているのだと、幼いながらに理解した。父は仕事にのめり込み夜遅くまで帰ってこなくなった、いつも出来たてを3人で食べていた夜ご飯は1人で作り置きを食べるようになった、寝る前に母に読み聞かせしてもらっていた本はなんだかつまらなくなってしまった。母はいつだってこの家の中心だった、優しくて厳しい人だった。そんなことを考えていると寂しくなってきた、「お母さんに会いたい」気ずけば窓の外に向かってそう言っていた、星に向かって話しかけた、お母さんを連れていかないで、返して、そう言っていた。父の話を信じていたわけじゃない、元々は私は現実主義で可愛げのない子供だった、お星様に母が連れていかれたなんて現実的では無い話を信じるわけない。それでも星に願った、母に会いたかったから、大好きな母に大好きな本を読んで欲しかったから、母の作ったご飯を3人で囲みたいから。私はひたすらに夜が明けても願った、声が枯れても、心の中でも、私は星に願った。