「ねぇ、泣かないで…」
そう言ってあげたいのにその言葉は
彼女には届かない。
今すぐ傍に行ってあげて抱きしめたいのに
『君はいつも頑張ってるよ。だから泣かないで…
君の頑張りは僕が一番知ってるんだから……』
そういいたいのに言えないこの見えない壁が
もどかしい…
届かないのはわかってるけどでも僕は君が
泣いてるのを見るたびにそう思うんだろうな……
「ねぇ、泣かないでって…」
外に出て自動販売機の中身が温かいものに
なっていくのを見た時にすごく冬だって思ったり
空気を吸った時にすごくいつもと違う空気を
吸った時に感じる……
あぁ。冬だなって……
「ねぇ、終わらせないで……」
その言葉を言えたらどれだけ楽なのだろうか。
でもきっと私は言えない。
貴方との出会いは家どうしの縁談だった。
最初は本当に嫌だった。昔に読んだ絵本のお話みたいに
好きな人と結ばれたいって思っていたから。
それが夢だったから。
だから縁談なんて家のためでも嫌だった。
初めは絶対に断ろうと思っていた。
でも貴方は私に微笑みかけくれた。一目惚れだって
言ってくれた。一緒に過ごすうちにこの人となら
一緒になってもいいって思っていたのに……
初めは嫌でもそのうち会うたびに好きになって
いったから……
昔に読んだ絵本と一緒ではないけど
"好きな人と結ばれたい"
その私の願いは叶っていたから……
でも現実はそんなに甘くない。
貴方は一生添い遂げたいと思った人に出会ったから
仕方がない……
貴方が笑顔でいてくれたら私は別に傍にいれなくても
いい……
そう、思ったから
本当に……"終わらせないでって"
言えたらどれだけ
楽になれるんだろう……
愛情表現が苦手だ…
彼はいつも私のそばにいてくれて私に愛情を
与えてくれるけど、私はその分だけ
返せているのだろうか……
そんなことを思っていると彼は優しく言ってくれた。
「僕は気づいているから。君が表現が苦手なの。
だから無理して返さなくていいんだよ。」
「でも……」
「それに、いつも愛情をもらっているよ。いろんなこととで……」
「いろんなこと?」
「うん。だって君がいつも僕にしてくれることは
全部愛情が入っているから……だから無理に伝えなくてもいいんだよ。僕は気づいているから。ね。」
そう彼は笑った……
落ちていく……
今自分がどこにいるのかわからない……
自分が何をしたかったのか目的も忘れそうになる…
落ちていくだけしかできない自分が大嫌いだ…
上がる能力も何もないからそのまま落ち続ける……
落ちた先には何があるのかわからないけど…
今日も落ちた先にはなにかあるのだろうか……
そんなことを思いながら落ちていく……