Machi

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5/12/2024, 10:53:30 AM

「子どものままでいるのは悪いことだろ。年齢に伴って、肉体と共に精神も成長していくべきだ。」
貴方はそう言った。
「私はそうは思わない。子どものままでも、いいんじゃないかな」
「どうして」
意見を否定されて不服そうにする。
「だって、子どものまま、無垢なまま、大人になれる人間なんていないんだもの。誰だって、おとなになれば本物の子供には戻れない。」
「そりゃあそうだけど…。」
貴方は食べていた味の濃いパスタをくるくると弄んだ。
「だから、その限られた時間を子どもとして生きたい。少しでも長く、子どもを感じていたい…。妥当な考えっていうか、悪くない考えじゃない?」
「…うーん…」
納得したくないというふうにへそを曲げる貴方の顔が、いつも見慣れたもののはずなのに素敵に見える。
「…大人になると私と一緒にいられない時間が増えるね」
「そ、それは困るな…じゃあやっぱ子どものままでいいや。」
私は紙ナプキンを手に取り、貴方の頬についたパスタのソースを拭き取る。
「ん、ありがと!」
今日も、貴方のあどけない子どものような笑顔がたまらなく愛おしい。 
どうか、貴方の心はいつまでも子どものままで。

5/11/2024, 11:36:21 AM

愛してる。
誰に教えてもらうでもなくとも、心が勝手に感じてしまう愛。
それは宇宙より広く、海より深い感情。
それは、簡単に貴方には伝わらないから。
言の葉一つをつぶやいたところで、この私の中で果てしなく広がる「愛おしい」という感情は伝わらないから。

だから、私は愛を叫ぶ。

5/10/2024, 12:02:34 PM

優しく揺れる葉を眺めながら、樹の下に腰を下ろす。
そして目を伏せ、母なる大地に還りたいと口癖のように言っていた彼を思い出した。
ねえ、貴方は大地に還れた?
貴方はとてもロマンチストで、自然を愛している人だったね。
私の初恋で、一目惚れの貴方。
いつでもどこまでも優しい貴方。
貴方が大地に還ってから、一年が経ったよ。
樹の音に耳を傾けながら、横に咲いている黄色の美しい花を見る。
大地に還った貴方が、一人ぼっちでも寂しくないように私が植えた花。
私は貴方の様に想像力が豊かでもロマンチストでもないから、母なる大地に還りたいと言っていた理由は分からない。
だけど、そんな私にも優しくして、大切にしてくれたのは紛れもなく貴方だから。
一年前から定期的に訪れるこの美しい場所は、きっといつまで経っても変わらないんだろう。
どうか貴方はここで母なる大地に還って、私を見守っていて。
風が吹き、葉が擦れる。花が揺れる。
それを契機にしたように、小柄で可愛らしいチョウが私の鼻先にまで飛んできた。
私は少し考えてから、話した。
「ふふ、大地じゃなくて蝶になっちゃったの?」
クスっと笑ったように、モンシロチョウはまた私の顔に触れた。

5/9/2024, 12:12:54 PM

私は貴方が全てだった。
だけど、貴方は私の前から姿を消した。
あれからもう、五年経っている。
貴方を忘れられない、いつまでも。

5/8/2024, 2:26:20 PM

一年前、高校卒業の春。
私と彼は決別した。
彼は未来へ進み、私は現状維持を選んだ。
自分が逃げたってわかってるし、彼が進んだってわかってる。
だけどそれを認めたくなくて、前に進んだ彼を侮辱することなんてできなくて、ただ、黙っていた。
あれからもう一年なんだと思うとあっという間に感じる。
彼は今、どこで何をしているんだろう。
来年の今頃は、成人式がある。彼も来るはずだ。
まだ幼くて彼の考えをはねのけた過去の自分を、この一年で咎め、改めた。
彼は変わっているかな、変わっていないかな。
変わったことを受け止めてもらえるかな。
一年後、また彼と話をしよう。

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