突然の君の訪問。
突然君が訪問してくるから何事かと思ったよ。君は基本、僕の家に来るときは連絡をいれるだろう? もしくは、学校帰りに僕が寄ってく? って、誘うかだ。いや、悪いとは思ってはいないさ。驚いてはいるけれどね。
再々言うけど、君はのっぴきならない理由がない限り連絡もなしに突然来るなんてことをする人ではないと僕は思っている。
君はきちんと確認をとる男だ。そして、きちんと自分の考えを伝えてくる男だ。
本を返したいから、庭先の梅がみたいから、僕と話がしたいから。君はそう言ってからお前の家に行っていいか? と聞くだろう。今までそうやって確認をとってから家に来ていた。君の行動は確認という手順を最初にいれてくる。これは僕と君が出会って二年以上経った中で得た君に関するものだ。これは間違いないと僕は断言できる。
では、どうして今君は何も連絡なしに突然家にやって来たか。そこがわからない。
あ、いや、答え合わせはあとでいい。まず、僕の見解を聞いてほしいんだ。
それで、考えられるものはそうだな……サプライズ、僕を驚かせたかったとか有り得そうだな。というか、今日は僕の誕生日だ。去年祝ってくれたから覚えているだろう。そして君のことだ。僕に最高のプレゼントを渡そうと考えてくれたんだろう? だって僕の誕生日だからね。
それで、僕は意外なものとか面白いものが好きだ。君もそれは良く知っている。だから意外と思えるものをプレゼントにしようと思った。そして僕が意外だと面白がってくれそうなものはなんなのか考えた。そこででた案の一つがサプライズだ。
変なところで不器用で、真面目な君の事だ。月並みではあるが有効だと思ったんだろう。なんといってもサプライズをやりそうにない男がサプライズをしようっていうんだからな。意外だと思ってもらえるとか思ったんじゃないか? 実際、僕が君の家に来たとき、すごく驚いたんだ。僕が寄越した連絡に返事がつかない。おかしい。今どこにいるんだろう。今日は特に予定がないはずだと言っていたのに、かれこれ数時間もメッセージを見ることもしていないっぽいのはどういうことだろう。そう思いながら部屋の窓の外を眺めていたんだ。
そこに、君が来た。君は、大急ぎで走って僕の家の玄関に飛び込んできた。弾丸って、こういうことを言うんだなと僕は感心したよ。それくらいまで早かったんだ君は。
まあ、話しを戻して。
そう。君は、これを見越して僕のもとへ来たんだよね。驚いてくれるはずだと君が連絡なしに来るのは珍しい何かあったのかとそう聞いてくるに違いないだろうと思っていたんだろう。うん、正解だ。僕はほんとうに驚いた。そして今はワクワクしている。
いったいこれからどんなプレゼントを渡されるのかをね。ほら、後ろに隠し持っているんだろう? 僕に近づかないのも見つかったら楽しくないからだもんな。うんうん。きっとそうに違いない。
さあショーゴくん。僕は君の奇行の理由を考えてみたぞ。答え合わせといこうじゃないか!
……何? 誕生日を覚えていなかった。そもそも今日は何日なのかわからなかった。おいおいどういう事だい? 僕の誕生日を忘れてしまうとか、君、らしくないよ。だったらどうして君はここにいるんだい?
ふむ。何? ただ会いたくなった? それだけ? ……僕が好きな曲が流れていていてもたってもいられなくなって、ねえ。ほんとうにそれだけなのかい? ほら、もっとこう、あるだろう? そんな思春期特有の衝動とかそんなものではなくてさ、君が考えた思考みたいなものが。
……ほんとうにない? 嘘だろ。じゃあほんとうに理由なく会いたかったから訪問しただけ? え、っっと……君、そんな人じゃなかったよね? 熱でもあるんじゃない?
今一番欲しいもの
早苗「ショーゴくんは何があるかい?」
翔吾「欲しいもの、か。アイスだな」
早苗「お、いいね。ちなみに僕はね、涼しい部屋!」
翔吾「お前が外に出たいって言い出したんだろうが」
早苗「そうだね。僕が散歩にいこうと言い出したんだ。でも、正直ここまで暑いとは思わなかったんだよ。それにちょっとそこまで~という軽い距離のつもりだったんだ」
翔吾「どこが軽い距離だよ」
早苗「いやあほんとに。思ったよりいけちゃった自分に驚きだよ」
翔吾「まあいい。とりあえず、帰ってアイス食うぞ」
早苗「その前にそこの自販機でジュース買おうジュース!」
私だけ
僕だけが知っている彼の表情だって? さあ? 僕はわからないな。
と、言うのも、僕が出会ったのは高校の入学式のときでね。実質2年くらいしか付き合いがないんだよ。だから、もしここで僕だけが知っているかもみたいな、淡くてくすぐったい独占欲のようなものを感じれる表情があったとして、実は僕と会う前にはその表情をよくしていたかもしれない、なんて事があるんじゃないかと思うんだ。
と、いうわけで、残念だけどその質問には答えられません。
ああ、でも、僕の方は彼だけにしか見せていない顔があります!
どんな表情かは秘密。でも、この話はまだ君にしか明言していないから、その辺りは彼に言わないでくれたまえ!
終わりにしよう
早苗「……ショーゴくん。これ以上は……ムリだ」
翔吾「そうだな。もう、終わりにするか」
早苗「っ、ハァ……。ようやく、終わった……」
翔吾「まあまあ頑張ったんじゃねーの」
早苗「いやあ思ったよりしんどかったなあ。たかが三十回と甘くみていたよ」
翔吾「五十くらい行けばよかったんだがな。まあ運動してないとこんなもんか」
早苗「君、それ僕が貧弱だって言いたいんだろう?」
翔吾「つっても腹筋三十回だからな。こんなもんだろ」
手を取り合って
早苗「我が校のフォークダンスは毎年女子が多すぎて男性役にまわるものが出てくることで有名なのだが、面白そうだから僕も男性役をしたいと言ったらダメだと言われてしまったよ………」
翔吾「なんでダメだったんだよ。身長か?」
早苗「確かに僕はそこまで身長はないけども、女子のなかでは普通の部類だぞ。だからそれは違うだろう。というか、その理由はきちんと聞いたよ。なんでもショーゴくんとフォークダンスで手を取り合うにはそちらの方が都合がいいからそうしなさいということらしい」
翔吾「完全におもちゃにされてんな」
早苗「そうだね。からかわれているね。まあ僕はそれで全然構わないんだがな。問題は僕とショーゴくんが手を取り合って踊るのは難しいのではないかと思ったんだ」
翔吾「どういうことだよ」
早苗「簡単にいうと身長の問題とまわる順番さ。フォークダンスの先頭は背の高い男子と背の低い女子のペアから背の順でいくことになる。おそらく君は背が高いから先頭に近く、逆に僕は普通であるから真ん中くらいからのスタートだ。そして躍りはオクラホマミキサーだから踊ったあと男子は前の女子、女子は後ろの男子へ交代する。ということは、君より背の低い男性からスタートしたらそのまま背の低い男性の方へ流れていくので一周しない限り君の元へはいけそうにない。そしてうちの学校のフォークダンスはせいぜい二曲しかない」
翔吾「なるほどな。だから難しいってことか」
早苗「そうなんだよ。しかしそれを彼女達に言ってやるのは野暮が過ぎると思ったからやめたんだが……言ってあげた方が親切だっただろうか」
翔吾「それはわかんねえな。まあリハで一回やっからそんときに気づくだろ」
早苗「確かに……! なら杞憂だな。ありがとうショーゴくん!」
翔吾「おー」
早苗「しかしあれだな。フォークダンスで君と踊れないのなら、手を取ってドキドキしている君がみれないという事になる。いやあ残念だなあ。君が顔を少し赤らめて僕の手を取る姿を見てみたかったぞ」
翔吾「なら、今するか?」
早苗「え」