今日も僕は色鮮やかな街の中にいる
いつもの街並みが綺麗に彩られて
僕はその街並みに似合うように
いい素材のコートにマフラー、
ローファーを履いて立っている
本当は醜くて、くすんでいる僕を照らしてくれるこの光がこの季節が好きだったりする
街の光に呑み込まれて自分は一切光っていないのに、輝けている感覚
自分だけど自分じゃない
足元の影には気づかないフリをした
#きらめく街並み
僕には気になっている人がいる
たまたま見た笑顔が少し可愛いなと思っただけ、まだ気になっている段階だ、たぶん
相手は僕のことを何とも思っていない
強いていえば友達……?いやないな
ただのクラスメイトという認識だろう
数回授業で話しただけの関係に名前を付けるようなタイプでは無い
とても慎重に人との距離を保っていること見てれば分かるし、いつも笑っているけど僕の心を掴んだ笑顔ではない
そんなとこも気になってしまうんだよなぁ
ある日の放課後、
僕は先生からの呼び出しを食らっていた
すっかり遅くなってお腹がすいた
今日の晩御飯はオムライスって言ってたなと呑気なことを考えながら、いつもより日が傾く中帰る
ふと人の気配を感じて反対側の歩道を見た
男女が立ち話をしている
後ろ姿で顔は見えないが、接触して無いしカップルでは無いのかな…?余計なことを考えていたら、女の子が男に向けて笑った
僕の惹かれた可愛い笑顔だった
心臓がバクバクする
いつもの愛想笑いじゃない
心を許してる人にしか見せない顔だ
何度も何度もあの男に、
どういう関係だ、気になる
何か男と話しているが遠くて聞こえない
次の瞬間、
あの子が真っ赤になって照れ笑いをした
見たことない可愛い笑顔だった
紅いのは夕日のせいにしたかった
好きな人にはあんな顔をするんだ、知りたくなかった
幸せな雰囲気に包まれている2人を見ていられない
モヤモヤする、あの男が羨ましくてたまらない
走ってその場を離れた
気づいたら家に着いていた
悔しくて苦しくてつらくて、
やっぱ好きだったんだな
もう遅い、気づきたくなかった
あの幸せな笑顔が頭から離れない
友達になる前に終わってしまったんだ
夕食のオムライスの味はあまり分からなかった
ただケチャップで描かれていたハートをぐちゃぐちゃにしてしまったことは覚えている
#紅の記憶
今はたった一輪だけど
来年になればきっとたくさん花を咲かせる
ありえないとこまで種がとんで
毎年毎年どんどん広がっていく
最初は一人でも
どんどん周りに人が増えていって
友達の友達も知り合いになって
どんどん人脈が広がっていく…
そんなの無理だよ。
君はいずれたくさんの花畑の一部になれるんだ。
僕とは違って。
一輪のコスモスに語りかける。
僕は悲しくて劣等感に苛まれて
コスモスを踏んだ。
一年後
ここで強く美しく咲くコスモスを見て絶望する。
#一輪のコスモス
静寂の中、ひとつの光が差す
溢れ出てくる熱量を持った願望に
嬉しいような照れくさいような
眩しいはずなのに君しか見えない
忘れられない
この感覚を恋と呼ぶ
#静寂の中心で
誕生日おめでとう
あなたにとって
たった1人、誕生日を祝った特別な女の子になりたくて
柄にもなく送ったメッセージ
何もつかない吹き出しに動かないメッセージ欄
あぁ、見つけてもらえず宙に浮いたこの言葉は
この気持ちはどこにいくのだろう
誕生日おめでとう
今年もまた行き場のないメッセージを送る
#既読がつかないメッセージ