#悠と響 (BL)
Side:Hibiki Kutani
「なぁ相棒、そういえば俺たちって互いのことを名前で呼んだことないよな?」
「そうだな…確かにないような気がする」
「けどさ、今更名前で呼ぶって照れくさくね?」
「そうか?」
星が綺麗な日の夜、俺は相棒と2人で遊んだ帰り道で何となく、本当に何となくそんな話をしていた。
自分から話題を振っておいてなんだが、だんだん胸のあたりがむず痒くなってきている。
「響」
「うぉっ!?何だよ突然!」
「…俺のことは名前で呼ばないのか?」
「あんたなぁ…!俺今照れくさいって言ったばっかじゃねーか!」
「何で?」
…本当に何でだろうな?自分でもよく分からない。
ただ、何故か照れくさく感じている。今更感があるからだろうか?
「呼んでみろよ、悠って」
「…はる…か?」
「ちょっと、何で疑問形なわけ?」
「うるせー!!」
星空の下で何恋人みたいなやり取りをしてるんだ俺たちは。
…でも、名前で呼ぶのも案外悪くはないかもしれない。なんて、悠本人にはあえて言ってはやらないが。
【お題:星空の下で】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・宮前 悠 (みやまえ はるか) 攻め 高2
・久谷 響 (くたに ひびき) 受け 高2
#佐橋と鷹宮 (BL)
Side:Aoi Sahashi
「なぁなぁ、もしいつかオレに彼女ができたらどうする?」
「もしそうなったら、お前を裏切り者として呪ってやろうかな」
「え〜、何じゃそりゃ〜!」
「冗談だってば」
放課後、僕はいつものように親友と軽口を叩き合っていた。
僕らは最初は恋愛に興味は無い者同士で意気投合していたのだけれど、最近の彼は彼女欲しい側への寝返りを匂わせ始めた。
そして僕の気持ちも…変わり始めている。
「ねぇ」
「ん?」
恋愛対象がどちらなのか、もしくはどれでもないのかは今の時代何もおかしいことではない。
そうだと分かっていても、本当の気持ちを伝えるのは怖いものだ。最悪の場合、親友を失うことになるかもしれないから。
「…ごめん、やっぱり何でもない」
「何だよ〜、もったいぶらずに教えろって〜!」
嗚呼、いっそ言ってしまえたらいいのに。それでも当たって砕けろ精神になれない僕は臆病者だろうか。
そして明日も明後日も、きっと僕は彼のいい''親友''のままでいる。
…今はまだ、それでいいのかもしれない。
【お題:それでいい】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・鷹宮 颯人 (たかみや はやと) 攻め 高1
・佐橋 碧生 (さはし あおい) 受け 高1
#歌が繋いだ恋のはなし (NL)
Side:Shizuna Kida
10年前、片想いしていた近所の男の子が私のために歌を作ってプレゼントしてくれたことがあった。
彼はそれからすぐに遠くの国へ引っ越していってしまい、私史上最大の失恋をしてしまった…と、思っていた。
その彼が今、私の目の前にいる。私よりもだいぶ背が高くなって、男前になった姿で私の前に現れたのだ。
「…覚えていてくれたの?」
「僕が初めて歌をプレゼントした女の子だよ、忘れるわけがない。…いいや、違う。むしろ僕が君に忘れてほしくなかったんだ」
世界にたった1つだけ存在する秘密の歌が、私達を再び引き合わせてくれた。
叶わないと思っていた恋に、小さな奇跡が起きた瞬間だった。
【お題:1つだけ】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・天善 凪 (てんぜん なぎ) 24歳 シンガーソングライター
・木田 静那 (きだ しずな) 24歳 花屋さん
#悠と響 (BL)
Side:Hibiki Kutani
最近、俺の相棒に彼女ができたらしい。
どうせただの噂だろ…なんて思っていたら、駅前で相棒が可愛い女の子と手を繋いで歩いているところに運悪く出くわしてしまった。
「…せいぜい幸せになれよ!」
意地を張ってついそんなことを言って逃げてしまったけれど、背を向けて走り続けている間ずっと俺の目の奥が熱く痛んでいた。
しかし数分後。相棒は俺を追いかけてきた。
「相棒、何で泣いてんの?」
「泣いてねーわ!」
恋人でもないのに何で泣いてるんだ俺は?
あの女の子に相棒を取られるとでも思っていたのか?
もう自分でも自分の感情がよく分からなくなっていた。
「さっき一緒にいたのは俺の妹だよ。彼女じゃない」
「…はい?」
何だよ妹かよ!と心の中でツッコミを入れながら、俺は両手の拳をぎゅっと握りしめた。
「…紛らわしいんだよ馬鹿野郎!!」
俺は半泣き半笑いの表情で、相棒の胸に通常より10倍ほど弱体化したパンチをお見舞いした。
【お題:幸せに】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・宮前 悠 (みやまえ はるか) 攻め 高2
・久谷 響 (くたに ひびき) 受け 高2
#悠と響 (BL)
Side:Haruka Miyamae
「俺はお前を命懸けで守るヒーローにはなれないかもしれないけれど、お前と一緒にいることはできる」
昨夜突然、相棒にそんなことを言われた。
いつもふざけてばかりいる奴がガラにもなく真剣な顔をして言ったものだから、俺は思わず吹き出してしまった。
「何だよそれ、今更告白のつもりか?」
「んなわけあるか。お前が仏頂面でいつまでも考え事してるから、笑わせてやろうと思っただけだよ」
何を突然物語のハッピーエンドによく書かれていそうなことを言い出すんだと思ったけれど、きっと不器用なこいつなりに俺に気を遣ってくれていたんだろう。
ありがとう、相棒。俺がいつも笑えるのはお前のおかげだ。
【お題:ハッピーエンド】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・宮前 悠 (みやまえ はるか) 攻め 高2
・久谷 響 (くたに ひびき) 受け 高2