僕は引き出しを確認する
今日も
キャラメルの箱と
苦くて飲まなかった風邪薬と
シャー芯の刺さった消しゴムの欠片と
ノートと
日記と
シャープペンシルと
メモと
ビー玉と
ねりけしと
作りかけて放置してるプラモと
大人の男用の雑誌一冊と…
毎日 僕は
僕の部屋の
机の一番下の
引き出しをチェックしている
ここは僕の秘密のものしか
入れてないんだ
鍵をかけてる
僕はこの引き出しで
将来的には
過去や未来に行くつもりだ
行けると思う
だって
そういう漫画があったから
僕は
隠してあるものをチェックして
今日も異変がないか
細部まで確認をする
キャラメルが減ってないか
苦い風邪薬が無くなってないか
チェックする直前は
なんだか
変にドキドキする
変化していて欲しい気持ちと
変化していたらどうしようという気持ち
どちらもあって
僕は
この引き出しが
いつか僕をどこかへと
運んでくれるようになることを
願っている
コーチのバッグよりも
エルメスの財布よりも
4℃のブレスレットよりも
ディオールの口紅よりも
無印のコームよりも
ジェラピケのパーカーよりも
AppleのApple Watchよりも
シャネルのサングラスよりも
今は
何かに囚われない広い視野が欲しい
父はある神社へと向かった
夏の暑い時期
汗をかきながら神主さんに
あるお願いをする
ある夏の暑い日の午前中
母はとある病院で私を産んだ
私は産声を上げた
父は母に神主さんからいただいた
紙を見せると
これにしたいと思う
と言った
あれから何十年
その神社はまだあり
その紙も家に保管されている
神主さんにお願いして
もらって来た
私の名前リストである
その中から
一番良いと両親が決めた名前が
今の私の名前です
今の私の視線の先には
憧れている人がいる
ひと目見た時から
まるで絵画から出て来た人のようだなと…
吸い込まれるような大きな瞳に
長いまつ毛
スッとした鼻筋
薄く少し困っているような唇
見惚れた
あの人は
どんな人が好きなんだろう
私には
時々ぶっきらぼうに挨拶をしてくれる
私は照れながら
今日も挨拶が出来て嬉しかった
あの人が惚れる人は
どんな人なんだろう
私は
ふわふわと
そんなことを考えながら
チラチラとあの人を見る
ダメだ
他のことが考えられなくなる
あの人は食べ物では何が好きなのだろう
どんな本を読むのだろう
何が趣味なのだろう
私は
沼に嵌って身動きを取れない木偶の坊と化して
ただただ 見つめる
秘密がある
自分にはもう1人の人格がある
そのもう1人は
自分が本当に意識の無いピンチな時に
出て来るらしい
しかも
人の話によると
猫だと名乗っているそうだ
オスの猫らしい
一度は
この人格のおかげで
命を助けてもらったようである
びっくりする
語尾は
〜ですにゃ
なのだそうだ
信じ難いが本当なのである
これは
自分だけの秘密事項である
ー日記
2024-7-某日