【贈り物の中身】


物忘れの多い俺だって

多少は学習もする

このタイミングで

クリスマスの話をするのは危険だ


幸い

他支店に行ったフレンズ達に

社内便でオヤツや小物を送る癖がある

ちょっと喜びそうな物と

ちょっとありがた迷惑な物


あんこ好きには

あんこのオヤツと

あんこ味のガム


グミ好きには

限定物のグミと

ネタ特化のグミ


便利グッズや

世界一辛い唐辛子

キャラクターグッズ

よく行ってたお店のラーメン


お返しを貰う事もある

英語が苦手と知った上で

英語のメッセージが添えてあった

所々は何となく分かる

翻訳アプリで答え合わせ

浮かび上がった文字は


「これらの贈り物があなたの体重増加に役立つことを祈っています...」

【凍てつく星空】


過去の教訓から

なるべくなら

自分の感情に振り回されないようにしたい

と思っている


まだ直情的だった頃

感情に任せた日々には

悪いことばっかりとは言わないけど

後悔の方が遥かに多い


別に無関心だとか無感動とかでは無く

振り回される時はしっかり振り回されるから

感情とは少し距離を置くくらいの方が

俺には合ってるっぽい


少し前に

久しぶりに振り回された


その前は...

十年いや

もっと前

二十年前くらいか


コップから溢れた感情を抱え

勢いのまま普段着にサンダルで家を飛び出した


普段やらない事をやると

ろくな事がない


財布

タバコ

車のキー

携帯


その全てが無い

道端に腰掛け途方に暮れる

たまに前を通る車に

不審者と思われるかも

なんて思いながら

人目を避けて河原に降りるくらいだから

感情はとっくに治まってる

しかし

勢いよく出てきた手前

忘れ物を取りに帰るのも恥ずかしい


田舎の冬は星が綺麗だ

防寒対策が万全なら

ずっと見ていられるかも


時間の経過も全く分からない

もう帰っても恥ずかしくない頃だろうか

もう少し頑張ろう


そんな事を考えてると

家の鍵もない事に気付く


戸締まりされたらもう戻れない


家の前で渋々の顔を作り帰宅

鍵は開いていた


時計を見ると

約二時間の大冒険

よく頑張った

【君と紡ぐ物語】


とある先輩が

「あの〇〇くんを育てたのは俺だ」と

出来の良い後輩の名を語る

もはやお決まりのネタ


そんな折

後輩から半年に渡る研修が最終日を迎え

なんと優勝したとの一報

全く大したもんだ


上手くは言えないが

俺の物差しにおいては

とてつもないハイスコアを叩き出した後輩だ

口にはしないが

後にも先にもこれ以上は無いと断言出来る

あくまで俺の物差しだけど


某先輩を見習い

俺も言いふらかそうと返すと

あの先輩の話は怪しいけど

私が俺さんに育てられたのは間違いないです

ですって

なんて可愛い後輩かしら


君と紡ぐ

今後もそんなタイミングが来るかは

分からないけれど

君の紡ぐ物語

特等席からそれを見る事が出来るなら

それもまた素敵な物語

【失われた響き】


その昔

とあるドラマに出てきたキーアイテム

天使を模したガラスのベル

見事に感化された嫁さんが

ご所望になられ

現地へ旅行に行った


観光しながら

あちこち歩いていると

ドラマのワンシーンと共に

並べられたベルを見つけて購入

鏡になった台座とセットだ

嫁さんも満足そう


梱包の上に梱包を重ね慎重に持ち帰った

帰りついた嫁さんは

子供達もまだ小さいから

明日

手の届かない棚を片付けて飾ると張り切っていた


翌日

仕事中に送られて来たのは

綺麗に割れたベルの写真

棚を片付けた後

お盆のように鏡の台座に乗せて

運ぶ最中の事故だったらしい


翼以外にも色々と折れたエンジェル

結局

俺はその響きを聴くことはなかった

【霜降る朝】


俺の住む所は

雪国とかではないけど

周囲の地域に比べて

冬が厳しい


雪の朝なんかは

辛うじて車を走らせ

地元を脱出すると

雪にまみれて走ってるのは

俺の車だけだ


漏れなく対向車からの視線が集まる


雪ひとつ無い中で仕事を終え

家に帰ると

まだ雪の中


また車の霜取りから始まる朝が来る


やっぱ俺は夏がいいや