【涙の理由】
いや
多いな
あまり泣く事がない
俺にとって
涙の引出しはそんなに多くないぜぇ
幼稚園の頃
年長さんの卒園式
みたいな催し
飾り付けられた部屋で
お歌を歌ったり
ゲームをしたり
ちょっと豪華なおやつを食べたり
どのタイミングだったかはっきり憶えてないけど
みんなが楽しそうに過ごす中で
何故か泣いてしまった
小学生になったらの発表中だった様にも思う
となりに居た子が驚いて
先生~!
俺くんが泣いてる~!
と先生を呼びつつ
心配そうにこちらを見てる
他の子も集まって来だした
なんで?
と聞かれるも
幼い俺はその答えを持ち合わせていない
泣いてる所を見られる恥ずかしさにも襲われ
自分でも正体不明だ
だけど
やって来た先生は
その答えを持ってた
泣き続ける俺をなだめながら
俺くんは年長さんと会えなくなるのが
悲しいんだよと
みんなに話した
大人ってすごいなと思った
もうあの時の先生の歳は追い越してしまった
あの時すごいと思ったような大人に
なれたかどうかは
考えないようにしよう
そっちの方向は向いてるつもりだけど
向こうと思ったのは
あれがきっかけだったりするのかなぁ
【コーヒーが冷めないうちに】
コンビニのコーヒー
後輩はいつもアイスで飲む
いつものようにレジで支払いを済ませ
いつもの氷入りカップを
いつものコーヒーマシンにセット
いつものアイスコーヒーのボタンを押して
コーヒーの抽出を待つ
いつもと違ったのは
抽出されたコーヒーが
はがし忘れた蓋のフィルムに弾かれ
冷める事なくカップの表面を流れ落ちて行った事
事情を説明して
再度料金を払おうとした後輩に
店員さんは
「お金はいいですよ」と
笑顔で対応してくれたそうだ
その後ついに完成したアイスコーヒーに
後輩は
スティックシュガーを入れてしまい
なかなか溶けない砂糖を延々とかき混ぜてると
先程の店員さんが
「お疲れですね...」と
さらなる笑顔で声をかけてくれたらしい
【パラレルワールド】
今は出来なくなったけど
まだまだ元気だった頃は
異なる2つの世界を行き来できた
外食なんかに行くと
ハンバーグも食べたい
揚げ物も食べたい
で
どっちも食べる
定食を2つ並べてご満悦
肉と魚も然り
パスタとピザならもう1つ
ハンバーガーなら更にもう1つ
今は流石に出来ない
だけど若い頃に買った苦労が
ここに来て実を結んでいる
体重って
こんなに時間差なの?
【時計の針が重なって】
歩みの遅い俺は
周回遅れでも
並んだ気になってた
後ろから掛けられる声に反応し
しばし会話を楽しんだ後
過ぎていく背中を幾度見送っただろう
君のペースはまだ落ちそうにない
俺のペースはもう上がりそうにもない
いっちょ追いついてやろう
なんて思う余裕もない
だけど思い出した
スタートしたのは
俺の方が断然先だった
立場逆転の周回遅れ
追いつけるかな
君たち
【僕と一緒に】
なんだろう
ほわわんとした
お花畑のようなイメージより
ある種
ホラーなテイストに感じてしまうのは
色んな作品によるものか
子供の頃なら
ほわわん一択だったはずだ
世の中も随分変わったように思う
情報量の少なさから
目に触れる機会が少なかっただけかなぁ
今見ると苦笑いするようなホラー映画に怯えてたな
暗闇を恐れてたけど
灯りが増えて
暗闇が減ると
そこにあるかもしれない何かよりも
そこに確実にある何かが見えちゃうようになったのかも
暗闇から飛び出す異形のモンスター達は
居場所と職を失い
特殊メイクをとって一般社会に...
お花畑と感じられなくなったのは
案外
俺も...かぁ?