【軌跡】


例えば

ちょっとした事件が起きる

そんな事は無い方がいいし

頭や膝を抱える日々は

永遠に続くとさえ感じる

それまでの日常とは

ずいぶんと異なる時間を過ごす事になる


もしかすると

その非日常の中で

現れる協力者もあるかもしれない

協力の末

窮地を脱したなら

そこに結ばれた絆の固さは想像に易い


一方

事件が起こらなかったなら

その絆は結ばれなかったかも知れないし

結ばれたとしても

同じ固さになるには

もっと時間を要したかも知れない


非日常であるが故に

交わせた言葉もあるだろう

急を要するならば

より直接的・本質的な表現で


結果

無い方が良かった事件も

起こるべくして起こった事件かのように思えたりもする


だけど

起こった反対側

起こらなかった反対側を覗くことは出来ない


平穏に過ごした日は

良く知る日常かも知れないし

起こらなかった反対側かも知れない


どうせ反対側は見れないのなら

見る事の出来たこちら側を

自分の残した足跡を

正解だったと言いたいじゃないか

【好きになれない、嫌いになれない】


その相反するそれはもう

自分だ

他の誰とよりも

付き合いが長いのに

未だ掴めない自分

影と似てるような

似てないような

【夜が明けた。】


それは

光の射すお話なのか

夢から覚めるお話なのか

冒険の終わりか

はじまりか

襲われた村人の確認か


明けた夜は

半日後にまたやって来る


繰り返される事象も

一部を切り取ると

始点にも終点にも思えて


この夜明けがどちらなのか

なんて

俺にはまだ分かりそうにもないんだ

【ふとした瞬間】


もうそこにはない物を

探してしまう


衰えたと思ってた

俺の記憶力も

案外まだまだ

【どんなに離れていても】


昔とは違い

人、場所、物、情報

色んな物との距離が近くなった

これからもますます近くなっていくんだろう


ネットで買い物なんて

お届け予定日に表示される

『明日』の文字に

未だに驚いてしまう


子供の頃

うちの田舎では

少年ジャンプが発売日に店頭に並ぶ事もなかったし

駅には伝言板なんかも設置されてた


旅行における重要なポイントだった

ここに行ったら名物のアレを食べる！も

家で食べられるようになった


もしかすると

家から一歩も出なくたって

過ごして行けるのかもしれない


色んな隙間が埋まり

色んな事が便利に早くなった


たまに置いてきぼりになるオッサンは

ゆっくりな方がいい事もあるんじゃ

なんて強がったりもする