【手のひらの宇宙】
瓶の中の海
空き缶の空
箱の中の世界
君の中の僕
千年先の夢
砂の中の希望
押し入れの冒険
歌えない歌
見失った時間
10人の中の俺
10000人の中のあなた
時を超える言葉
閉じ込められた夜空
写真の風景
ポケットの中の戦争
色々と逸れた
今
手の中にある機械は
図書館であり
ショッピングモールであり
地球儀であり
天体望遠鏡であり
歴史であり
世界であり
宇宙かもしれない
お釈迦様の手のひらを飛び回った猿の話があった
俺の手に収まる宇宙は
時として
自分の大きさを錯覚させる
手のひらに収まっているのは
自分の方なのに
【風のいたずら】
いやぁそれ
中学生が喜ぶヤツじゃん
なんて貧相な発想しか・・・
あ
いや
俺も喜びますけど・・・
よし
切り替えよう
けっこう前
仕事で外回りをしてた時だ
公園の横に車を停めて
地図だったか、書類だったか
確認してた時
少し風があり
時折車が揺れてたけど
気にする程でもなかったように思う
手元の書類に落とした目の端に
何だか妙な違和感を感じた
視線を移すと
公園のベンチにオジサンが座っていた
さっきはオジサンが何が動いていたようだ
な~んだ
と
また書類に目を落とすが
違和感はますます強くなる
何かおかしい
再びオジサンの方を見ると
オジサンがベンチに座ったまま
どこか一点を見つめ大きくのげぞってた
今にも後ろに倒れそうだ
マトリックス・・・
思わず呟いた
さすがに風のいたずらでは無さそうだ
健康体操の類か
体調不良か
後者の可能性を感じ
車から降りようとした時
さっきまで死角だった木の向こう側
オジサンの視線の先が見えた
まだ若い女性が居た
ミニスカートだった
オッサン元気じゃんっ
そして風のいたずらじゃんっ
結局
貧相な発想じゃんっ
【透明な涙】
いつも隣にいて
同じ物を食べ
同じ物を見て
同じ所に行き
一緒に笑い
一緒に泣き
一緒に悩み
たまにケンカもして
そんなあの子と
別々の道を進むようになった時
落とした涙は
もう同じ色ではなく
きっと同じ場所にも流れて行かない
そう感じた
それからしばらく
涙を流す事はほなくなった
理由は分からない
泣くような事がなかった訳でもない
随分と年月が過ぎたあと
再び泣くまで忘れてた
今となっては
あの時の涙がどんな色だったか思い出せないけど
同じ色なんて言ってたくらいだから
透明じゃなかったんだろう
そして再びの涙も
きっとこの先も
透明な涙を流す事は
無いんじゃないかと思う
あぁ
もしかして
顔だけ笑ってる時の
あれの事なのかも
【あなたのもとへ】
遠くへ行くあなた
ちょっと遠くなったあなた
たまに会うあなた
きっともう会う事はないあなた
変わらず元気そうなあなた
少し疲れてそうなあなた
たまに声を聞かせてくれるあなた
まだ見ぬあなた
そう言えばのあなた
やっと楽になったあなた
さらに進むあなた
追い越して行ったあなた
怒り心頭のあなた
幸せそうなあなた
たくさんのあなた達と
相変わらずな私
【そっと】
だいたいの事は
それがいいと思うんだ
身をかわすのも
差し出すの手も
かける声も
決意を固めるのも
スピードも勢いも重要だけど
それは
他を犠牲にした全力のそれではなく
無駄を省いた結果として
丁寧なまま
脱力のまま
自分のまま
そんなイメージ
それが
来し方なのか
教育なのか
環境なのか
どれから来るのかは分からないが
とりあえず今は
自分の走書きを解読しながら
そっと
ため息をつく