縁側に座って夏の暑さを感じる。
チリンチリンと優しい風鈴の音が聞こえる。

こんな何事も無い時が好きだ。
優しい風鈴の音が優しく包んでくれるみたいで。

私はよく｢心が強いね｣と言われる。
そんな事を言われる度に私は笑って誤魔化す。

この目は現実を見ているかもしれない。
だけど心はずっと逃避行している。
全部が全部を直視出来る訳が無いからね。

こっちの世界は冒険し尽くした。
だから次はあの世を冒険してみたい。

あの世に行くには死ぬしかないのが不便だな。
まぁ…だからと言って諦めないけどね。

あの日から境に動かなくなった君。
ずっと無表情で僕を見つめるだけ。

君の笑顔が見たい、君の声が聞きたい。
そう願っていても君にはもう届かないだろう。
この願いだけは君に届いて欲しいのに。

あの日の景色を今でも思い出す。
君に誘われて行ったあの河川敷。

君の遺書には忘れて下さいって書いてあった。
けれどそう簡単に忘れるか、忘れてたまるか。
君との思い出は一生色褪せないんだから。