─優しくしないで─
私、あなたのことが嫌いです。
私を一番にしてくれないあなたが。
私だけに優しいふりして思わせ振りしたあなたが。
ここまで私をおかしくしたあなたが。
でも、あなたと出会ってからの私も嫌い。
最初は明るすぎて嫌いだったはずなのに、いつの日か好きになって。
片思いでいいからって、あなたを見守るだけの恋をして。
あなたのことを嫌いになろうとしても逆効果で。
どうしてもあなたに期待してしまう私が嫌い。
だからもう私に笑い掛けたりしないで。
もう私に話し掛けないで。
もっとあなたが好きになって、自分が嫌いになっちゃうから。
あなたの「自分を好きになれ」って言葉を、私は守り続けたいから。
酷いことを言ってるのは分かってる。
でも私、傷つきたくないの。
だからもう、私に優しくしないで。
─カラフル─
僕には人の頭が花に見える。
ある女子生徒は彼岸花。ある男子生徒はガーベラ。
他にも百合、カーネーション、紫陽花。
いろんな種類の花に見える。しかも種類も違えば色も違う。
例えば、同じ薔薇の花でも、
赤色の人、青色の人、虹色の人。それぞれ違う。
頭が花に見えるようになってから、
学校がカラフルに色づくようになった。
ただでさえ全校生徒が多いこの学校は、どこでもカラフルだ。
そんなカラフルな学校を見るのが僕は好きだ。
しかし、いつも頭の花を見ているせいで、
周りからは気味悪がられている。だからいつも僕は一人なんだ。
ある日、僕は鏡を見た。
僕の頭は、見たことのない、花と言えるのかも分からない花だった。
嗚呼、僕はこんなにも汚れた花だったんだ。
そりゃそうか。気味悪がられるような存在だもんな。
僕も、みんなみたいな綺麗な花がよかったな。
題名『十人十色の花』
─楽園─
私ね、毎日夢を見るの!
私にとって夢は楽園なの。
だってね、嫌いな奴を殺せるの!
いじめてきた奴も、そいつの家族も殺せるの!
とっても楽しい夢なのよ!
でもね、その夢にも不思議なことが1つあるの。
それはね、嫌いな奴を殺した夢のあとには絶対、
追いかけられる怖い夢を見るの。
追いかけてくる奴は銃を持っててね、
この前なんて足を撃たれちゃた!
夢にしてはリアルで、とても痛かったわ。
それが昨日あったこと。
まだ足が痛いの。なんでだろう?
「まぁいっか!」ってあまり気にしなかったの。
今日の夢はね、今までよりも、とっても怖かったの。
いつも追いかけてくる奴に捕まっちゃった!
別の建物につれてかれて、お話をしたの。
でもね、話が長いの!つまらない!
あーあ、早く夢が覚めないかな。
題名『覚めない楽園』
─風に乗って─
私はね、今日ベランダで歌ったんだ。
風がとても強かったよ。
気を抜いたら落ちちゃいそうなぐらいつよかった。
でもね、その風のおかげで沢山歌えたよ。
私の声を全部消してくれるの。
歌うのは楽しかったよ。
自意識過剰だけど、意外と上手く歌えたと思うの。
風に靡いてる庭の木を見てたらね、ふと思ったの。
声を消すみたいにベランダから落としてくれないかな、って。
風に乗って、私の存在ごと消してくれたらいいなって、思ってしまったの。
最近ね、私は死にたいのか分からなくなっちゃって。
風に押されたら、自然に死ぬことができるかなって思ってね。
そんなことしても、死ぬ勇気がなければ抗ってしまうのにね。
分かっていても、いつまでもこの癖は抜けない。
ベランダに居ると、楽になれるから。
だから今日も、風の強いベランダで、私は歌う。
─刹那─
みんな知ってる?
刹那って、瞬間とか一瞬って意味らしいよ。
まるで僕の死に際みたいにね。
僕は去年の夏、学校の屋上から飛び降りた。
死ぬのは一瞬だった。
僕の死に際は、刹那と言うにはぴったりだった。
誰にも愛されず、僕自身も誰かを愛さず、
そんな醜くて悲しい人生を歩んだ。
でも今は悲しくなんかないよ。
彼が僕の命日に、必ず会いに来てくれるから。
死んでも尚、ずっと屋上に居る僕に。
そんな優しい彼は、今年の夏も誰も居ない屋上にただ1人。
片手に花束を持って泣いている。
「なぁ、親友。お前が消えて悲しいよ。」
僕の親友は、泣き虫だったね。
そんな泣き虫の、たった1人の親友へ。
『ありがとう。僕の大好きな親友。』