11/16/2023, 10:27:29 PM
「はなればなれ」
花の中の雄しべにとって
雌しべは高嶺の花で
誰かの力を借りてようやく
届くことのできるかもしれない
一生届かないかもしれない
狂おしくも もどかしい
呪わしい距離
あなたのことを想うとき
小さな花の中の
雌しべに恋い焦がれて
無力感を感じる雄しべほど
はなればなれではないことを
私は幸せにおもう
「はなればなれ」
11/15/2023, 1:38:10 PM
「子猫」
急ぎすぎてよろけて歩くところ
首を傾げるところ
目を見開いてビックリしたり
そばに来て と呼ぶときも
すべて
愛されるようにできている
こんなに愛しい存在に
触れずにはいられない
あなた
ときどき
子猫
11/14/2023, 2:58:28 PM
「秋風」
私が秋風を嫌うのは
何もかも、目を閉じている間に
あっという間に運び去ってしまうから
そうして秋風がその腕に囲みこんだものは
二度と戻ってこないから
だから今年の誕生日は 独りだから
だから私は秋風が嫌い
「秋風」
11/13/2023, 2:03:07 PM
「また会いましょう」
これは哀しい寂しい言葉
いったいいつ また が来るのか
なんの確約もとらず
それなのに別れられるなんて
これは哀しい寂しい関係
本当に繋がっている時には
明日 また来るね
という
あなたの目を見て
自分にも誓いをたてる。
何があろうとも あした
あなたに会いにくることを
「また会いましょう」
11/12/2023, 12:18:51 PM
「スリル」
戸棚の中に隠れている時
チェーンソーを構えた仮面の男が
一つずつ扉を蹴り上げて
だんだんこちらに近づいてくる。
画面の向こう側で
ハラハラするのをスリルという。
しかしこの仮面の男が
カラシニコフを構えて
アーミーヘルメットを身に着けていた場合
こういうのはスリルとは言わない。
ジェノサイドという。
「スリル」