「懐かしく思うこと」
懐かしく思う
何を食べようか
何を買おうか
何を読もうか
何を観ようか
何をしようか
自分だけのために時間を使っていた頃
今はといえば
一緒に何を食べようか
一緒に何を買おうか
一緒に何を読もうか
一緒に何を観ようか
そして
一緒に 何をしようか
毎日 ときめきと驚きと
忘れ難い想い出を重ねてゆく
昨日の出来事を
懐かしく思うほどの
濃厚な時間
「懐かしく思うこと」
「もう一つの物語」
外界で多くの敵に囲まれて
緊張と闘いを強いられ
太陽が西に落ち
月がのぼる頃
足を引きずって見えぬよう
背中や腹の傷を気取られぬよう
髪と服を整え
あなたの家のドアを叩く
「お疲れ様」
全て見抜いて されど口にせず
ただ結界を張って守ってくれる
あなたの側にいると
傷が癒えてゆく
不思議な非日常
もう一つの物語
「暗がりの中で」
本当にあなたのことを
想っている
遠くから 遥かな遠くから
細く かすかに でも
決して途切れない想いは
明るい昼間には見えない
青空の中では
人々の笑顔の中にはみえない
私の心が見えるのは
あなたが打ちひしがれて
希望を見失って
人々の嘲笑と攻撃にさらされて
心が暗がりの中に
ポツンと置き去りにされたと
感じた時だけ
暗がりの中でないと
本当のまごころはみえないものだから
暗がりを恐れないで
顔を上げて
そう
私をさがして
「暗がりの中で」
「紅茶の香り」
何を見てるの?
と訊かれたときに
私はテーブルの上の
ピンク色のカーネーションを見ていた。
あなたの話を聞きながら
私があなたを見ないのは
カーネーション
振り子の揺れる柱時計
窓に当たる雨粒
ティーカップのワイルドストロベリーの柄
カップの中の琥珀色の世界に映る私
甘さを抑えたチーズケーキ
BGMのエリック・サティー
いろんなものを見るたびに
いろんなものを聴くたびに
あなたの声を思い出すため。
そしてほら
この紅茶の香りも
もう一度嗅いだときに
必ず私はあなたの声を思い出す。
向かいのあなたは
また笑いながら
何を見てるの?
と私に訊ねるけど
わかってるんでしょ
「紅茶の香り」
「愛言葉」
私が何度もなんども
メッセージを書いては消し
悩みながら
あなたを温めてくれる
やわらかいことばを選ぶように
あなたもおそらく
メッセージを書いては消し
考えながら
わたしを笑顔にする
あたたかなことばを選んで贈る
文字をみただけで
どんな速さで読んだら良いか
わかってしまう
文字と文字の間に覗く
あなたの顔がわかってしまう
あなたにもきっと
私が見えているから
これはわたしたちの「愛言葉」
「愛言葉」