「すれ違い」
いま私の目の前にいるあなたの
五年前、四年前、三年前、二年前、
一年前、
あなたの語る過去の話の舞台には
私もちょうどいたらしいことを知り
すれ違っていたらしいその頃に
私はあなたに気づかなかったのか
あなたは私に気づかなかったのか
「気づかなかったことに意味がある」
とすれば
だからこそ
いま生活の中ですれ違う
様々な人たちを大切に想い
彼らが誰かの特別な存在であることに
敬意を持って丁寧に接しなければと
思うわけ。
「すれ違い」
「秋晴れ」
秋の空はとても高い。
雲のかからないその高い空を見て
「空が遠い」
と 私が言う。
「天高く馬肥ゆる秋」
と あなたが言う。
その昔、中国の広い広い草原に済む
騎馬民族の軍隊が
草を充分に喰んだ丈夫な馬に乗り
遊牧民の討伐にでかけたという。
馬肥ゆる秋と口にして
空を恨めしく見上げたであろう
その遊牧民たちを想い
「哀しいね」
と 私が言う。
何も聞かずあなたが
「哀しいね」
と 返す。
だから私達の心は
螺旋のように絡み合い
高く高く空へと
秋晴れの空へと 昇ってゆく。
「秋晴れ」
「やわらかな光」
公園の南側まで陽が届くころ
唐突にあなたが
「座ろうか」と言った。
無言でベンチに腰掛けて
陽の光を浴びる私達
昨夜、別れを告げて
それでも離れるべきではないと
あなたの元を訪れた私と
昨夜、別れを告げられて
今日自分に会いに来たのが最後なのだと
私の声を顔を脳裏に焼き付けるあなた。
「幸せだ(最後にありがとう)」
とつぶやくあなた
「幸せね(ずっとそばにいる)」
と返す私
二人の本当の想いを語り合うのは
翌日だけれど
今はまだ すれ違う二人の心に
ただ ただ やわらかな光
「やわらかな光」
「鋭い眼差し」
「あんた、何で堪えないんだよ。」
ですって。
鋭い眼差しなどで
私に攻撃した気になる輩は
正面からではなく
後ろから睨みつけて
振り返ると下を向く。
そもそも私にものを言いたい人間ならば
眼差しなどではなく
正面から 口を開いて議論する。
だからあなたなどは無視できるってこと。
わかる?
そういうこと。
「高く高く」
高く跳ぶためには
低く屈まないとならない。
つまりは大事なことは
真逆の中にあるということ。
高く 高くを目指すのであれば
自分の今の足元を見て
低く 低く屈むこと。
「高く高く」