「時を告げる」
ああ いまわたしの
さいごの呼吸
さいごの瞬き
さいごにあなたをさがして
あなたのてをとって
あなたのなまえをよんで
ありがとう あいしてる
と
いいおえるまで
どうか かみさま
時を告げないで
「時を告げる」
「貝殻」
貝がら
それは魂の抜けた抜け殻
それでもなお
生きた頃の姿を残し
人々の心を動かすほどの力を宿す。
あるものは恋人の手のひらの中
あるものは名もなき芸術家の作品
あるものは心躍らせる女性のイヤリング
あるものは目を輝かせる子どもに握られて
美しき気高き生きた証
いきた証
わたしはなにをのこすだろう
「貝殻」
「きらめき」
木の葉にのこる朝露とか
水面に映る陽の光とか
雲間から差し込む天使の梯子とか
雨上がりの山の木々とか
夜の海を照らす街明かりとか
目で見えるきらめきは
こんなにもあるのに。
目で見なくてもきらめいているもの
それがあるってこと
ふしぎだけれど
どうしてあなたの姿だけ
光っているわけはないのに
きらめいてみえるのだろう。
「きらめき」
「些細なことでも」
些細なことでも
目にとまる、
気になってしまう。
心配でたまらない、
泣けてくる、
幸せを感じる、
どうしたことか
心が嵐のように乱される
それが 愛
「些細なことでも」
「心の灯火」
人の心は宝石のようだと
ひとは云う。
ダイヤモンドのように
硬くて価値があり
カットされて磨かれて美しく輝く。
サファイヤのように
ひとを慰め
エメラルドのように
ひとに寄り添い
ルビーのように
人を駆り立てる
私の心は きっと真珠
ダイヤモンドもサファイアも
エメラルドもルビーでさえ
透明で隠すところがないこころ
わたしのこころは真珠
誰もわたしを削れない
誰も私を暴かない
ほんわりと白い光をその身に纏い
内側からの かすかな光でその身を飾り
真球であるその心は
どこからも覗かれる隙がない。
その私のこころの真珠を
内側からほんのりと照らすのが
決して誰にも触れさせない
心の灯火
たいせつなわたしのほんとう
たいせつなわたしのしんじつ
「心の灯火」