窓越しにみえるのは
ふと、窓に手をあわせる。
外はまっくらだ。あかりもない。
私がいる部屋は明かりがついている。
いつもの白いLED。
中腰になっている足元には、
いつも読んでいる本が積み上げられている。
隣にはいつも飲んでいるコーヒー。
.
..
...
....
.....!
まて、「いつも」ってなんだ
いつもこのコーヒーを飲んでいるのか?
いつもこの本を読んでいるのか?
いつも白いLEDの明かりを浴びているのか?
ふと目線をおとす。
この白い手は誰のだ。自分のか!?
目線をあげる。
窓越しの存在と目が合う。
お前は誰だ?
そう思った瞬間、窓の外の存在が、
私を指さしてこういった。
お前こそ誰なんだ?
夏
「こんにちはー!今年の夏休みもきたよ!」
がらがらと扉をあける。
「いっぱいの荷物そこにおいておいてー!」
隣の座敷の部屋に荷物をおく。
部屋につながる縁側の先をみると大きな陶器のかめがあった。去年、田んぼや川でおじいちゃんとどじょうやえびをとったときにいれたあのかめだ。
今年も、そう思うと胸がどきどきする。
そのまま目線を外にやると、
目の前には隣の家の畑、わさわさと生えるトマト。
その後ろに見えるは遠くにはえる桜の木と
もくもくのくも。
ちょっと湿度がまじったつめたいような風。
「雨がふるかもねぇ、洗濯とりこんでくる」
とばあちゃん
こんな天気で雨が降るのかと思っていたら暗くなってきて、ゴロゴロと音が聞こえたと思ったら
ザーっと大粒の雨がふってきた。
わーほんとに雨だ。
懐かしい夏の始まりの1ページ。
この家が、それから10数年先になくなるとは
このときは思いもしなかった。
ここではないどこか
「おはようございます」とロボット
目の前の透明なパネル
起動させ、今日のタスクがうつる
白い部屋、白いベッド
外には灰色の雲と黒い高層ビル群
隣の棚には茶色いくしゃくしゃの紙と
ハマユウの白くか弱い花が入った花瓶
こんな世界でハマユウなんて誰がどこから
持ってきたのだろう。
そもそも私はいつからここにいるのだろう。
また瞼が下がってくる
どうしてこんなにもねむいのか
ああ、ハマユウはあの人が好きな花じゃないか
ハマユウの花言葉はたしか。
私もすぐそこにいくから。