今日の空は何色か

Open App
3/19/2025, 3:59:57 PM

お題 どこ?


 今日は久しぶりの休みだから、一緒にお出かけがしたいって言ったのは、君だった。僕は別に、家にいようが外に出ようが、それほど変わりは無かったから、君に促されるまま、一緒に外へ出た。

僕の目に映る君は、いつにも増して楽しそうで、外に出るのも悪くないかもって、そう思った。おしゃれなカフェ、かわいい雑貨屋さん、ついこの間テレビで紹介されていた花屋さん。正直僕にはよくわからないけど、君の目が時折嬉しそうに細められるのを眺めていて、悪い気はしない。

歩いて、歩いて、歩き疲れて。公園のベンチでほっと一息。そろそろ帰るか。そう、ポツリと君が呟いたその時、僕の視界から君が消えた。遠ざかっていく足音が次第に周りの音にかき消されていく。どこに行ったのか、なんてそんなの家に決まってる。とはいえ僕は動けない。どうやらベンチの裏に落っこちたらしい。
赤とも紫ともいえない微妙な空が次第に黒く染まっていくのを、僕はただ、眺めていた。

こんなことになるなら、君の笑った顔、もっとしっかり目に焼き付けておけばよかったな。いつの間にか日はすっかり暮れてしまって、欠けた月が雲の合間から顔を出している。僕がいなくても、僕の代わりはいくらでもいるし、君の笑顔は僕がいなくたって守られる。けれども、やっぱり、僕が最初に見たのは君で、僕が最初に触れたのも君で、僕が最初に聞いたのも君だから、僕は、ぼくは、ボクハ。


「見つけた!」


不意に体が持ちあがる。糸でできている僕の目は、涙で滲んだ君の目を、しっかりと捉えた。

「ごめん、ごめんね、ああ…かわいいおててが泥んこだ…」
本当だよ。君ったら落としたことにも気づかないで行っちゃうんだから。
「気づいた時、心臓が止まるかと思った…。また買えばって、そういうことじゃないもんな」
へえ…。そうなんだ。…そうなのか。
「帰ろっか、今度こそ」
うん。…うん、帰りたい。

カバンの中から聞こえる鼻歌が今はただただ、嬉しかった。糸の目が滲むことも、綿の詰まった体が動くこともないけれど、君のそばにいてあげてもいいと、今度ははっきり、そう思った。