2/25/2024, 12:22:32 PM
「降水確率30%」
いっそ降ってしまえばいいのに。
持ってきた長傘の出番がないまま、交差点が近づいてくる。
今度会える約束なんて、ない。
いっそ振ってくれればいいのに。
はっきりと言わない貴方。
はっきりと言わないのは私も同じ。
狡さを比べる。
認めたくなくて。
いつだって前向きでいたくて。
「じゃあ、またね」
もう会わないという決意は、私の中でだけ。
振り返らない。
雨音は拍手。
赤い長傘に零れ落ちるものを隠す役を与えて歩き出す。
────物憂げな空
2/25/2024, 5:14:23 AM
「mother」
出生の秘密────なんて大袈裟なこと、知りたくなかった。
だから、母親のことなんて、名前すら知りたいとも思わない。
遺された子供の気持ちなど、まったく考えていない。
自分の命と引き換えに産むなんて、虫と同じだ。
二度と会えない男の子供を命懸けで産むなんて、正気の沙汰とは思えない。
俺はずっとそう思っていた。
だが、母のことを知る人物から語られる真実は、それを覆すことばかり。
俺にこの世界を見せたかった母。
最期の言葉は光を灯し、道標となっていく。
────小さな命