彼女は毎日決まった時間に時を告げる。
ニュースキャスターの第一声のように淀みなく、
そして、恐ろしくよく通る声で。
それが彼女の仕事であり、
間違いなく「天職」といえる域に達していた。
彼女自身も自分の仕事を誇りに思っているようで、
彼女の表情からは自信と覚悟、
そして静かな威厳を感じた。
彼女の声色は、若干独特な響きを持っていた。
その特徴をうまく説明する自信は無いが、
同世代の女性達の声と比べてみた時に、
明らかに異質なモノであると言わざるを得ない。
そしてその声を聞いたほぼ全ての人間が、
多かれ少なかれ不快感を抱き、眉をひそめる。
5年前、
私がはじめて彼女と出会った時、
彼女に対して繊細で大人しく真面目な子だと感じた。
だからこそ、周りからの評価の低さを不思議に思い、
彼女の境遇を不憫に思ったりもした。
しかし今では私も、その他大勢の例に漏れず、
彼女の声に眉をひそめる人間の仲間入りをしている。
それどころか、
彼女に対して声を荒げて罵ってしまう事も
一度や二度ではなかっただろう。
私から度々そんな扱いを受けていても、
彼女は決して嫌な顔ひとつせず、
時に病的なまでに律儀に規則正しく、
自分の仕事を全うしていた。
昨日までは。
【鏡】
今あなたの目の前にいる私は、
どんな顔をしているのかしら。
あなたが嬉しそうなら、
私もきっと嬉しい顔。
あなたが優しい笑顔なら、
私もきっと優しい笑顔。
あなたが悲しそうな日は、
きっと私が悲しい顔をしていたのね。
【友情】
私には、
定期的に連絡を取り合う友達が1人もいない。
「友情」を感じる相手がいない。
学生時代の友達、職場の同僚…
それぞれで仲良くしていた人はいる。
というか、
私は低姿勢で人当たりが良いタイプなので、
特に社会人になってからは、
人間関係で困った事は一度もないぐらいだ。
けれど、学校や職場が変わると、
その付き合いは終わる。
その後も連絡を取り合う事はごく稀で、
プライベートで付き合う人が1人もいない。
ついこの間も、
以前の職場で仲が良かった3人組で
夕飯を食べに行こうと誘われたけれど、
職場が変われば会う事も無いのに、
プライベートな時間を使ってまで
話をする必要が無いと思って、
断ってしまった。
私はいつもそうだ。
つい「必要」か「必要無い」か…
そこで判断してしまう。
なのでいっつも「知人」や「同僚」止まり。
プライベートな時間を共有する「友達」には
ならない。作ろうとも思わない。
たまに寂しく感じる事もある。
何でも話せる友達が1人でもいたら、
人生もっと楽しいんじゃないか?って。
こんな匿名性の高いSNSばかり選んで
投稿しているようじゃ、
そんな友達は出来ないって事も分かっているけど…
母親とすら良好な関係を築けない自分にとって、
赤の他人との友情は、
本当にハードルが高い。
【今一番欲しいもの】
そりゃ間違いなくお金だな。
とにかく収入と支出のバランスを
何とかしないとヤバい。
【私だけ】
私だけは人とは違う。
そんな自分には特別な魅力があると考えて、
周りとはちょっとズレてる自分を
演出したりする。
けれど大抵の場合、
特別感なんて全く感じない程度の人ばかり。
同じように考えて行動してる人が
あちこちに大量発生してるからね。
完全に自分のオリジナルって事は無い。
みんな何かしらに影響を受けて、
無意識のうちに真似して生きてる。
特に、聞かれてもいないのに、
勝手に自分語りを始めるタイプは
かなり重症だと思う。
どんな有名なクリエイターだって、
他の色々な作品を見て、
様々な分野からたくさんの物をインプットして、
そこから発展させて作品を生み出している。
過去の経験や記憶に頼らず、
完全にゼロから生み出すなんて、
無理な話。
絶対に何をするにしても、
何をひらめくとしても、
過去に見た何かから影響を受けている。
そこから発展させて何を生み出すかが重要。
「私だけ」というのは嘘であり無価値。
私はそう思っているから、
得意げに自分語りを始めた人からは
そっと距離を置く事にしている。
関わったとしても、何の特にもならないだろうから。