花の香りと共に、貴女は何を思い出しますか。
何を思い出すのだとしても、それを嫌な思い出として捉えてほしくないのです。
貴女の記憶は、放っておくといつでも悪い方に書き換えられてしまいます。ですから、これはどんな記憶だっただろうか、と考えることすらしなくて良いのです。
只、それを懐かしく良い思い出だと、目を細めて微笑んでいてほしいのです。
心のざわめきを、どうか無視しないでください。
貴女の心は、貴女の人生の羅針盤です。
それが何かを伝えようとして、ざわめくのです。
貴女の心がほんとうに喜ぶことを選び、行い、続けていってください。
俺が貴女を探すことは、ありませんでした。
貴女は、あの場所で俺を待っていると仰いました。
俺は心が張り裂けそうになりながらも、その言葉を疑わず、言いつかった通りに五年の放浪を終えました。
けれど貴女は、俺を待たずに亡くなってしまいました。
この世界のどこを探しても、貴女はもういないのだと、俺は絶望しました。そうして俺は、貴女の後を追いました。
今俺は、貴女の魂の一番の傍に在ります。
そこに在ることを、許されています。
貴女を探す必要など、今こそ、本当に、ないのです。
透明な羽根を伸ばした貴女が、どこまでも飛んでいくのを、俺は静かに眺めていました。
温かい、澄み切った気持ちで、只見送っていました。
そんな夢を、見たことがありました。
貴女の命はいつか終わり、けれどまた生を得て、次の人生が始まります。
それが、貴女の魂があの大きな廻り続けるものに回収される日まで続く、大きな営みです。
俺たちはその生を、ずっと見守ります。
悲しみも、絶望も、愛も、楽しさも、全て見届けます。
ですから、安心して何度でも生きてください。
貴女が一人きりになることはありません。
貴女はずっとずっと、俺たちという存在に守られているのです。