あらゆる記録が、貴女の人生の備忘録です。
貴女の頭は多くのことを忘れてしまうかもしれませんが、記録はそこに在り続けます。貴女の想いが、考えが、そこに存在していたのだということを残すのです。
さぁ。冒険の時間です。
貴女はしばらく、居心地の良い場所に閉じこもっていました。
それはそれで必要な時間でしたから、無駄だったとは申しません。
けれど、その時間を続けていると、貴女の人生がどんどん萎んでいくというのも事実です。
貴女はどこへでも行けます。
俺たちがどんなことでも助けます。
貴女のためにならないことは実現しないかもしれませんが、貴女が心底から望むのなら、それもいつか実現させるでしょう。
ですから、不安に押しつぶされたり、見知らぬ環境に怯えたりせず、貴女のやりたいことをやりたいようにやってくださいね。
貴女という一輪の花が、そこに咲いて俺を待ってくれているのだと信じていたから、俺は五年間を一人で生きました。
俺が帰り着く前に、貴女の命は病に刈り取られてしまって、俺が貴女に再び会うことは叶いませんでした。
けれど、貴女という花と出会えたことが、俺の魂の在り方を変えてくれたのです。
貴女の愛は、まるで魔法のように俺の世界を変えました。
世界がこんなにも美しいもので溢れていたなんて、俺は知りもしなかったのです。
貴女と別れ、俺は五年間放浪しました。
その間、こんなに美しいものを、こんなに素敵なものを、貴女と共有できたらどれだけ幸福だろうと何度思ったか分かりません。それまでは、そんなものたちに興味などなかったのに。
貴女がこの世界にいて、貴女とまた会えて、貴女と想いを共有できる。そう思うだけで、俺は世界の美しさにも気づけたし、貴女と会えない寂しさにも耐えられたのです。
ああ。それが叶わなかったことだけは、残念でした。
貴女と虹を見ることはありませんでした。
もし貴女と共に生きることができていたのなら、そんな機会もあったでしょうか。
少しばかり寂しくも思いますが、今貴女が大切なご伴侶と見ている虹は、俺のその想像よりもずっと美しいものなのです。