白糸馨月

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5/23/2024, 3:50:48 AM

お題『また明日』

「また明日」

 そう言って僕は友達と別れた。また明日も会えるって信じてるからいつだってそうして、毎日学校で会ってバカ話して、一緒に帰って別れる。これの繰り返しがずっと続くと思ってた。

 親から友達が事故に遭ったと聞いた。塾行く途中、自転車で走ってたら車にはねられたらしい。
 僕は友達が入院してる病院を聞いて、すぐに自転車を走らせる。友達のことを思うとやりきれなくて、涙と鼻水が止まらない。

頼む! 生きててくれ! また明日だって学校行くんだろ!

 無我夢中で友達がいるところへ、僕はペダルを漕ぎ続けた。

5/21/2024, 11:26:48 PM

お題『透明』

 地下アイドルのライブ後の接触イベントの後、日課にしていることがある。
 私には、物心ついた時から透明人間になれる能力がある。おとーさんや、おかーさんはちがうけどおばあちゃんもそうだったからきっと隔世遺伝ってやつなんだろうね。
 一人暮らしをはじめてから家賃と食費と、自分の身を出来るだけ安いお金でかわいくすること以外は推しに費やしてる。推しのライブは全通だし、接触イベントにもすべて参加してる。多分認知もされてると思う。
 だけどそれだけじゃ足りなくなって、私はライブ終わった後、透明人間になって推しの後をつける。
 ある時はメンバーと打ち上げをしてる時もあれば、そのまま直接家に帰っている時もある。ドアを閉められても私は壁を通り抜けることが出来るから、推しの部屋の中に入ることもできてしまった。
 そこでわかるのは、推しはメンバー愛にあふれてることと、女性の影がないということだ。部屋に入ればメンバーとうつった大きなポスターが飾られてて、別のLEDが灯された棚ではメンバーのアクリルスタンドがライトアップされて飾られている。
 おまけにゲーミングチェアに大きなパソコンのディスプレイが二つあって、いつも推しはここでメンバーとか他のアイドルグループのメンバーとFPSをしたり、かと思えば熱心に曲を作ったりしている。ストイックで男だけで遊ぶのが好きなのが分かる。
 横から見て推しが眠るのを見届けた後、私も満足した気持ちになりながら部屋を出る。私も眠って仕事したら、今日はイベントないしエペ開いてランク上げなくちゃ。
 今やってることがストーカーだって? いいえ、推し活です。それも透明になれる私だけの特権です。

5/20/2024, 11:24:16 PM

お題『理想のあなた』

 テーブルをはさんで目の前の男を見る。私は今、婚活をしていて、目の前の男を自分の理想にあてはめる作業を頭のなかでし始めた。

 まず、髪がもうすこし長ければよかった。社会人は、さっぱりとした短髪がよく、社会的なうけがいいが私が好きなのは今のK-POPアイドルみたいな髪型だ。
 あと、眼鏡もやめて欲しい。一定数眼鏡が好きな人はいるけど、私は好きじゃない。カマキリみたい。
 あごがたれさがってるのが気になる。もうすこし筋トレをしてくれればいいのにと思う。

 そんなことを考えていたら相手男性が

「へぇ、お金がかからないといいですがね」

 と眼鏡の鼻のあたりに手をやりクイッと上げた。さっき私が推し活が趣味だといった話の流れだ。
 そのとき、私の額に青筋がうかぶ。

(理想に合わないどころか、感じ悪っ。最悪)

 私は心のなかで目の前の男にバツ印をつけた。

5/20/2024, 3:49:07 AM

お題『突然の別れ』

『別れてくれる?』

 突然、付き合っていた人間からこんなLINEが来ても私の心はいつもと変わらなかった。
 そいつは、街コンで一番マシな男を選んだ結果、たまたまカップリングになり、一回しかしてないデートで「好きなんだ」と告白されて、特に断る理由がないから付き合った人だ。恋愛感情なんて一ミクロンたりともなかった。
 それが付き合ったら、いきなり手を繋いできたからその距離の縮め方にびびった。正直、居心地が悪かった。
 何度かデートして、やはり展開が早かった。昨日もデートしていた。
 そんな男が急にさっきみたいなLINEをしてきたのだ。
 すぐに気持ちが盛り上がる男だからさめるのも早いのだろう。

「やっぱ、その程度の男か」

 別れた理由は、どうでもいい。ただ彼氏が欲しいだけで付き合った男だから。私は、返信もせずLINEを閉じた。
 

5/19/2024, 1:39:29 AM

お題『恋物語』

「私、今狙ってる男がいるんだよね」
 とか
「えぇーん、彼氏が浮気したのぉ」
 とか
「私、今度結婚するんだよね。もう七年も付き合ってるからねぇ」
 とか
 そういった話を聞くたびに私には縁のない話だなぁと、聞いている。私には恋愛経験がないし、そもそも恋心が湧き上がった経験がない。私にとって『恋』は、物語みたいに空想じみてるものだ。知らない世界の話を聞くために私は今日も友達の恋物語を聞くのだ。

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