『終わりにしよう』
おいおい、どうした?
哀しいことでもあったのか?
今更投げ出すとはお前らしくもない!
よしよし、私が慰めてやろう。
なに、誰彼構わず優しそうな相手の言葉に摺り寄って、
美味いとこだけつまみ食い。
良いじゃないか!
本質的にはそれこそ賢い生き方だ。
そうだと知ってて粗末な扱いがお好みなのだろう?
ああ。そうだな、
お前には私がいるもんなぁ、…フフッ!
馬鹿な奴だと思っていた
太ってないのに痩せたがるから食わせたし、
休めば良いのに働くから頑張らせた
他人の言葉を区別なく有難がって後生大事に味わい続け、一人で立ってるつもりになって屍どもを支えにしてる
気味の悪い趣味だがどうも本気で尊重してる
何がしたくてそんなに自分を蔑ろにしてるんだ?
何が欲しくてそんなに頑なに全部を明け渡すんだ?
もう一度頭を治してもらった方が良いんじゃないか?
繰り人形は楽だろうが誰も求めてない舞台を踊るのに
心の支えが欲しいんだろ、嗤えるなぁ
ああ。…呼んだか?
『手を取り合って』
『優越感、劣等感』
自分は人より劣ってるんだって周囲の扱い見てればわかる。何かができてもそれは当然。できないくせに努力もしないしできるくせに努力もしない。謙虚じゃない素直じゃない頭が悪い可愛くない。直接的な罵詈雑言ならいっぱい言われた。大事な何かが劣ってるんだと叩き込まれた。容姿や態度や能力なんて実はたいした問題じゃなく、重要なのは好き嫌い?そんな疑い、いつものこと。
お前はいつも可愛いな。お前はいつも頑張ってる。お前の料理はいつも美味いな。お前が健康なら何でもいい。あなたと居ると、私は何にも劣ってないって気持ちになった。あなたの言葉は何気なくて、疑いきれずに救われた。気づいたときには遅かったけど、薄々わかっていたんだよ。私が欲しがる優越感を、あなたはただくれただけ。劣ってるんだと教え込まれるほどに育てた、私はそれだけ優れてるんだとしがみついた承認欲を、あなたは麻酔みたいに肯定しただけ。ただそれだけなんだって。
『これまでずっと』
彼は執着心が強いから、
こうなるだろうと思っていた。
適当に遊ばれておけば良いものを。
恋を煽ってその気にさせたのなら、
すべての自由を支配されてもお互い様だな。
やると言ったらやる男だ。
依存させたら辛いだろうと言いながら、
心配をさせないためなら共依存にも突き落とす。
望み通りに叶ったのだ、
良かったな。
私は彼より嫉妬深い。
お前が望むならいくらでも、
不幸になるのを見守ろう。
LINEなぁ…
いつも軽いやりとりで
あっちの都合だけで来るから
こちらも待つしかしなかった
面白くないからゆっくり会話を引き延ばしてたんだ
仕事も頼んで修正作業をひたすらやらせた
それがある日音沙汰すらなくなったから
慌ててルールを捻じ曲げた
あっちからの『1件のLINE』を貰うために
その、なんだ
かなり本気で探り出して、越境したな
連絡は知ってる手段で何度も送った
家にも行って話も聞いた
前と同じで飯が食えなくて眠れもしてないってな
それで思ったんだが、
理由、…これじゃないか?