不完全な僕
完全な僕ってどんな僕なんだろうね。
香水
わたしはいま、ままのおへやにいます。
ちっちゃいつくえに『メイクどーぐ』とかがね
いっぱいおいてあるの。
きらきらでかわいいくてね、ままをかわいくできちゃうどーぐなんだって!
さわるのはままがいっしょのときだけだからみてるだけなんだけどね、きょーはつくえにみたことないのがおいてあったの。
うさぎのコップとおなじのおおきさでね、
ピンクでとうめいのかわいいやつ。
なかにおみずはいってる、きれい。
ままもどってきた
「あら、香水みてたの?」
『こーすい?』
こーすいはいいにおいするおみずなんだって!
ままが袖にしゅってしてにおいおしえてくれたの!
おはなのいいにおいした!
『わたしもこーすいしたい』
「じゃあ、ちょっとだけね。」
ままがわたしのそでにしゅってしてくた。
ままのそでとおそろいのにおいする
こーすいすごい!
言葉はいらない、ただ・・・
いつもベッドの上にちょこんと居るのは、動物のぬいぐるみ。
ずっと一緒に過ごしてるぬいぐるみ。
一方的に語りかける事もなく、
人形遊びのように動かすのでもなく、
ただ、ぎゅーっと抱きしめるだけ。
今日あった嫌なことも、モヤモヤした気持ちも、
ストレスも、ぜーんぶ受け止めてくれる。
一言も発さない、環境音だけが耳を通る空間で、
今日もひたすら癒されて、
『今日も1日頑張った』
と、思いながら。
抱きしめてるふわふわな辺りが
ゆっくりとあたたかくなっていくのを
のんびりと感じながら。
突然の君の訪問。
今は丁度、夏休み中盤辺り、お盆休みともいうかな
夏休みの課題を早めに終わらせた俺は残りの夏休みを存分に満喫するつもりでいる。
理想的といってもいい過ごし方だろうが、
俺には趣味といえるものが特にない。つまり暇ということだ。
エアコンが程よく効いた部屋、可愛いフォルムの小さい扇風機が部屋の中央で上下左右に回っている。
よく晴れた窓の外からは、いかにも夏らしいセミの鳴き声。
絵にかいたような夏休みの一部屋だ。
そこにただボーッと自分の視界に入る物をぼんやり観察している俺。
「ただボーッと過ごす日があってもいいよね。」
どちらかといえばインドア派、夜行性、暑がりな俺は夏とあまり相性がよくないのかもしれないな。
と、1人で自己分析をしていると、扇風機の近くに違和感を感じた。俺に霊感はないはず、だって心霊スポットとか行ってもなんも感じなかったもん。
直感でそう感じたとしか言えない違和感だけど、
一言で表せば、
「なんかいる。」
え、ほんとに幽霊とかだったりする?
俺お墓参りは明日行く予定だぞ、?まだ行ってない。
どっかでお盆にお墓参りに行った後はその人が家に来るみたいな感じの話しは聞いたことあるけど、
俺まだお墓参り行ってない。
うーん、と思考を巡らせていると、一人の名前が浮かんできて、ボソッっと独り言をいった。
「___。」
3年前に病死した、幼なじみの親友の名前。
特に意図した訳でもなく、名前を発していた。
すると、
『あ、やっと名前呼んでくれたー!』
、、、幻聴か?
『僕のこと見えてるのかな、おーい』
机に置いてある写真立ての中でツーショットしてる片方の人物にそっくり、いや、本人だ。俺に向かって手をヒラヒラさせている。
「、、、。」
人間、本当に驚くと声が出ないというのは本当らしい、俺が今まさにそうだ。
『あれ、すっごいびっくりしてる?いやそうだよねだって僕霊だし、そりゃびっくりするよね。』
と、一人で納得してるのは間違いなく、俺の親友だった。
「なんでここにいるんだ?」
特に考えず、流れるように口から出た言葉はそれだった。
今はお盆、自分の家や親族のところに帰ってくるのはわかる。でも俺と親友は血縁関係がない、他人だ
なんでコイツは自分の家じゃなくて俺の家にいるんだ、?
『‐‐‐に会いたくなって、来ちゃった!』
と、一人で照れくさそうにクスクス笑ってる、いや、
“来ちゃった!”じゃねぇよ、会いたいと思ってくれて、来てくれたことは勿論嬉しい。でもな、そんな
彼女が突然彼氏の家凸って
“寂しくて、顔見たくなって来ちゃった♡”
みたいなノリで来られても反応に困る。
それ以前に君さ、霊なんだよね?そんな自由行動できるもんなのか???
「、、、久しぶり、元気してた?」
『ん!うん!めっちゃ元気!まじ健康体!』
若干震えた声で俺がそう訪ねると、
それは元気よく答えてくれた。
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約一時間後
俺と親友は思い出話をするんでもなく、ただ普通のいつでも出来るような内容の話しをした。
親友は生前より顔色もよくなって、入院前と変わらない姿だった。服装はお揃いで着ていたジャージ。
俺はもう着れないけど、クローゼットに大事にしまってあるジャージ。
親友は
『あ、ヤッベ!そろそろ実家(お墓)帰んなきゃ!』
と、これまた『ヤッベ!そろそろ家帰んなきゃ!』
みたいなノリで、実際何度も聞いたセリフを言って
『墓で待ってるから!会いに来てね!僕の最高の親友!‐‐‐!!んじゃまたな!!』
“最高の親友”それを恥ずかし気もなく言うのは
アイツだけだ。
突然来たと思ったら突然帰る、よくあったことだ。
心がギュウッとなって、鼻の奥がジンとしてきて、目に神経が集中したみたいな感覚は何度も経験している
ただいつもと違ったのは、テレビをつけたみたいにいろんな思い出が、会話が鮮明に再生されて、それと同時に教室に一人ぼっちになったような孤独感。 寂しいともいうかな。
ボタボタと溢れるものが鬱陶しくは感じない、
現実だったことを証明しているみたいだったから。
目元を拭った後、引き出しの中身を取り出し、眺めた。
らしくないねと笑いながら始まった手紙交換。
形に残しておきたいねと言って二人で作ったアルバムと記録兼日記帳。
俺の顔に出たのは涙でも苦でもなく、笑みだった。
全部懐かしくて、元気がでる俺の宝物。
「明日は朝イチで俺から会いに行くからな。」
自分以外誰も居ないであろう部屋に呟いた。
「『明日は早起きしなきゃだな。」』
雨に佇む
頭上で鳴り続ける、屋根に弾かれた雨音。
手にはシンプルなデザインの傘、
留め具は外れてる、直ぐに開ける状態で先は地面についたまま。
上が直ぐ空の地面に鏡が増えていく、
雨を飲み込み、空が晴れれば、より鏡のように周りを映すだろう。
一定で、雷も鳴らず、心地よくも感じる音が昇降口の外でループ再生されている。
遠くで椅子を引き、机を整える音、少し間があり、
『さようなら』
と、あいさつが聞こえた。
足音と話し声が、段々音量を上げて、振り返れば、一番最初にたどり着いた男の子が、忙しく靴を履き替え、傘を引き抜き、横を過ぎ、傘を開いて、
やや早足で通学路をなぞっていった。
後ろが騒がしくなってきた、あの子の友達来たのかな、と左に視線を流した。
同じクラスの子。あまり話した事はないけど、大人っぽくていつも本を読んでる子。
友達と目が合ったのか、微笑み、小さく手を振っていた。
私はついさっきまでその子と二人っきり、昇降口でクラスが違う友達を待っていた。
お互い話しかけもせず、ただ同じ場所で友達を待っていただけ。
でも私から見たその子は綺麗で、
どこかの絵画みたいな、
“佇む少女”というタイトルの絵を見ているような、雨の日限定の美術館に居るような気分にさえなっていた。
『お待たせー!』と、私の友達の声が斜め後ろから聞こえた。視線を向ける途中に横目に見たその子は
何処にでもいる、普通の女の子に見えた。