ramune

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雨に佇む


頭上で鳴り続ける、屋根に弾かれた雨音。

手にはシンプルなデザインの傘、
留め具は外れてる、直ぐに開ける状態で先は地面についたまま。

上が直ぐ空の地面に鏡が増えていく、
雨を飲み込み、空が晴れれば、より鏡のように周りを映すだろう。

一定で、雷も鳴らず、心地よくも感じる音が昇降口の外でループ再生されている。

遠くで椅子を引き、机を整える音、少し間があり、
『さようなら』
と、あいさつが聞こえた。

足音と話し声が、段々音量を上げて、振り返れば、一番最初にたどり着いた男の子が、忙しく靴を履き替え、傘を引き抜き、横を過ぎ、傘を開いて、
やや早足で通学路をなぞっていった。

後ろが騒がしくなってきた、あの子の友達来たのかな、と左に視線を流した。

同じクラスの子。あまり話した事はないけど、大人っぽくていつも本を読んでる子。

友達と目が合ったのか、微笑み、小さく手を振っていた。

私はついさっきまでその子と二人っきり、昇降口でクラスが違う友達を待っていた。

お互い話しかけもせず、ただ同じ場所で友達を待っていただけ。

でも私から見たその子は綺麗で、
どこかの絵画みたいな、
“佇む少女”というタイトルの絵を見ているような、雨の日限定の美術館に居るような気分にさえなっていた。


『お待たせー!』と、私の友達の声が斜め後ろから聞こえた。視線を向ける途中に横目に見たその子は
何処にでもいる、普通の女の子に見えた。

8/27/2024, 12:13:03 PM