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2/2/2026, 10:05:40 AM

昔、好きな遊具があった
回る球形のジャングルジム
ゴンドラみたいなブランコ
列車ごっこじみた遊動木
小さな魚のいる噴水
今はほとんど無くなって
すっからかんな公園に
静かな風が吹いている
砂埃だけが遊んでいる

‹ブランコ›


艱難辛苦の荒波を超え
遂に果たした世界平和
沸き立つ民衆を潜り抜け
政の思惑を振り切って
走って走った故郷へ
大切な人達の居る場所へ

けれど必死に止める人がいて
その為に襲う人すらいて
何だか嫌な予感がして
走って走った故郷へ
何度も辿った道筋を

地図を見た 方角を数えた
けれど其処には何も無い
人も家も草も地も
何も何も何一つ

耳元に声が囁いた
間髪入れずに頷いた
何処にも帰れぬ平和なぞ
何にも何にも価値が無い

‹旅路の果てに›


開けた手のひら大きな蛙
怯える無様を嗤っていた
開けたプレゼントは虫まみれ
上がる悲鳴を嗤っていた
掛けた言葉の棘まみれ
震える背中を嗤っていた

開けた靴箱に手紙が一つ
拾う指先を見つめていた
開かず手紙はびりびりと
開かずプレゼントは潰されて
開けた手のひら振り払われ
「永遠に赦さない」と
冷たい声で嗤っていた

‹あなたに届けたい›


大好きだよ、と君が言う
その目は私を見ていない
愛している、と君が言う
その目は私を見ていない
そっと近付いて口付けた
その目は私を見ていない
見えないくせに見ようとして
ほんとうほんとうバカな人
さようなら、と最期にちゃんと
君に言えていたのなら

‹I LOVE…›


故郷に戻ってきた
優に数十年振りだった
駅からのバスは無くなって
三十分の徒歩の道
友人達とぎゅうぎゅうに
なりながら通学したなと
バスの面影を追おうとして

買い食いした商店も
駄弁っていた公園も
入り浸った友人の家も
更地か、あるいは全く別の
建物に成り代わっていた

そういえば
実家も立て直したと聞いていた

不意に
わたしが懐かしむべき街は
もう無いのだと気が付いた

‹街へ›

1/28/2026, 9:38:51 AM

優しい優しい女の子
涙にハンカチ
笑顔に花
優しい優しい女の子
傷に手当
暴力に忍耐
優しい優しい女の子
罪に赦し
罰に慈悲
優しい優しい女の子
気持ちに鈍感
殺意に無力
優しい優しい女の子
けれど誰も覚えてない
なのに誰にも想われない
優しい優しい女の子
可哀く愚かな聖人紛い

‹優しさ›

1/26/2026, 11:29:05 AM

夜の一番暗いとき
見付からないようおまじない
昼の一番明るいとき
見出さないようおまじない
月の一番満ちたとき
見入られないようおまじない
日の一番輝くとき
見潰れないようおまじない
深淵の一番深いところ
見返されぬようおまじない

‹ミッドナイト›

1/25/2026, 10:18:19 AM

音を出してはいけないよ
声を出してはいけないよ
そうさこれはかくれんぼ
怖い鬼に見つからないよう
身動ぎしてはいけないよ
扉を開けてはいけないよ
だってこれはかくれんぼ
恐い鬼に気付かれないよう
泣いてしまってはいけないよ
怒ってしまってはいけないよ
だって君は可愛い子
復讐の鬼にはならないよう
約束約束指切りげんまん
幸せに生きてそれだけで
錠を落とした扉の外
僕は勇者になれるはず

‹安心と不安›


写真を撮ってほしいと古いカメラを渡された
アナログなそれに手こずらないよう
丁寧に丁寧に教えてまで
普通のデジタルので良いじゃないかと言えど
これが良いのだと譲らない

朝日の昇る様を背に
1枚だけのポラロイド
真っ黒に現像されていく
その表情を見れたのは

‹逆光›


何もかもがありました
平和な日々も
穏やかな時間も
満たされた心地も
大切な人たちも
何もかもがありました
何もかもがありました
あのひとが誓った白い花の
指輪にそっと口付けて
何もかもがありました
夢の中なら何もかも
現から必ず辿り着くと
約束をしたひとだけが

‹こんな夢を見た›


好きな時間に行けるなら
どこに行きたいと問うてみた
ずっと未来と無邪気な笑顔
宇宙の終わりを見に行きたいと

成程この子は
だから今

‹タイムマシーン›


机の上は準備万端
ケーキを切ってお酒を注いで
時計の針が頂点を
目指すまでわくわくした瞳
0のコールも高々に
グラスを呷って背から倒れて
大人の最初の一口目
笑っちゃうくらいに苦かった

‹特別な夜›


例えば例えば暗い海の
例えば例えば深い底
きっと誰にも見付からず
潰れて消えてしまえるのに
どうしてもそこへいけないの
どうしてもそこへいけないの

‹海の底›

1/25/2026, 9:59:21 AM

突然駆け出したくなるくらい
突然わくわくしてしまうの
突然見たくなるくらい
突然どきどきしてしまうの
突然声が聞きたくて
突然突然電話をしたの
ずっとずっとずっと静かで
誰にも誰にも繋がらないの

‹君に会いたくて›


ガラスケースの中、一冊の本があった。
古い古い本で、誰にも触れられないよう
厳重に守られていた。
だから怪盗になろうと思った。
最後の日の記録を見たくて。
君の答えをどうしても
どうしても知りたかったから。

‹閉ざされた日記›


「木枯らしってその内
 夏の季語になりそうね」
「暑過ぎ立枯れ注意ってか
 やかましいわ」

‹木枯らし›


絵具を混ぜていました
赤をピンクを
黄をオレンジを
緑に青に紫に
虹の色を作りたくて
混ぜました一つ残らず
白も黒もはだ色も
黄緑水色灰色も
全部全部混ぜました
そうしてできた酷く濁った
そんな色が好きでした

‹美しい›

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