何処かの国で日が昇る時
僕らの空には月がかかる
何処かの国で雪が降る時
僕らの地から水が消える
何処かの国で王が立つ時
僕らの街から葬列が発つ
‹Sunrise›
吐いた息が白く染まる
ふわり空へ解けていく
吐いた息が泡を形どる
こぽり空へ昇っていく
吐いた息が灯を揺らす
ふつり光が消え落ちる
‹空に溶ける›
丁寧に繕って丁寧に手直しして
あの人に貰った贈り物
丁寧に扱って丁寧に飾り直して
あの人が最後にくれたもの
何年経っても手放せない
手放す気はさらさら無い
きっと墓場まで持って行く
あの人と隠した秘密のこと
‹どうしても…›
まってと後から声が掛かる
「それじゃ分からない」と彼女は言う
駆ける脚は蝶の様に
ふわり宙を舞っている
まってと後から声が掛かる
「それじゃ分からない」と彼は言う
止まる呼吸は骸の様に
静かに過ぎるを待っている
まってと後から声が掛かる
「それじゃ分からない」と誰かが言う
「名前を呼んで」「正確に言って」
「そうじゃ無ければ分からない」
「君のことなんて分からない」
‹まって›
何を努力したら幸せになれますか
どの道を行けば手に入りますか
いつなら動いてもいいですか
誰の隣なら居られますか
どうして
どうしたら私にも『普通』が得られますか
‹まだ知らない世界›
あの子が夢を叶えられるなら
あの子が大人になれるなら
僕もうそれで良いからさ
あの子が平穏に愛されるなら
あの子が幸福に生きられるなら
僕もうそれで良いからさ
あの子の近くにいられなくても
あの子と言葉を交わせなくても
あの子達の未来を守れるなら
僕もうそれで良いからさ
僕もうそれで良いからさ
あの子達が笑っていられるなら
それだけで世界を救えるから
‹手放す勇気›
暗ければ暗い程 スポットライトは眩いから
闇深ければ深い程 光は強く目を惹くから
君の素晴らしき舞台の為
未来の輝かしい瞬間の為
この舞台を黒く染めよう
邪魔者たちの罪深き血で
汚さぬように深く暗く
‹光輝け、暗闇で›
息を吸って 息を吐いて
いつもみたいに? いつもみたいに
空気を呑んで 空気を出して
当然みたいに? 当然みたいに
息を吸って 君の前
息を止めて 君の前
当たり前みたいに? 当たり前みたいに
呼吸をとめて 君の前
呼吸をやめて 君の前
居ないみたいに? 居ないみたいに
生きるに大事な一欠片
君みたいに? 君みたいに
‹酸素›
糸に針を結わえて
ぽんと放り投げれば釣れるような
そんなふうだったら良かったのに
君の好きだった海釣りを
私は見たことはないけれど
狙って投げれば針の先
いつかはいつかは引っかかるような
そんなふうだったら良かったのに
君と家族の思い出も
君と友人の思い出も
君と私の思い出も
そんなふうにそんなふうに
君が思い出せるなら
君が孤独にならないのなら
そんなふうだったら良かったのに
‹記憶の海›