人工の星空 天然のプラネタリウム
おかしい話と君は言う
主従が狂ってとっ散らかって
おかしい話と君は言う
ならば生きた宝石は 死んだらただの人かしら
夢見るように君は言う
煌めく眼差しを夜空になげて
夢見るように君は言う
美しい君 生きていた君
けれど 死んで尚君は宝石だった
‹星明かり›
こん、と狐を形どった
障子の向こうで笑う音
わん、と犬を形どった
障子の向こうで怖がる音
ひら、と蝶を形どった
障子の向こうで近づく音
ぱちん、と部屋の電気が付いた
暗い所で何しているのと
階段を降りていく足音
障子の向こうは誰もいない
‹影絵›
この世に生を受けた時
輝く夢に遭った時
大切な君を見付けた時
挫けて膝を付いた時
再び前へ駆け出す時
いいやいいやまだまだ違う
私を示す言葉はまだ
一頁目を飾る言葉はまだ
まだ私は得ていない
‹物語の始まり›
心貫く一閃を
歴史刻む一戦を
言葉呑み込む一鮮を
格違える一線を
一を積み上げ千を超す
零の掌に覚悟燃し
‹静かな情熱›
空からの声に応えてはいけないよ
と君は言う
上からの声に応えてはいけないよ
と君は言う
ほしを見上げて君は言う
どうしてと問うたいつもみたいに
見下ろす君の目を見たくって
どうしてと問うた君の声に
"私の上から聞こえた声"に
‹遠くの声›
猫が鳴いている
蝶が舞っている
気忙しく花が咲き散り
浮き立つ声すら怪しい
風も無いくせ空気は色付き
心無い溜息すら勝手な視線に染められる
嘘も本当も聞きたいように
偽証も真実も感情のままに
何を語るかはご自由だが
巻き込んではくれるなと
振り返す足跡は一つだけ
‹春恋›
「花屋さんになりたいな」
「ケーキ屋さんなら食べ放題?」
「服屋さんのおしゃれな人」
「ゲームでかっこよく勝つ!」
「アイドルで応援されるかな」
「警察で銃撃ってみたい」
「消防士さんでみんな助ける」
「お医者さんで何でも治すの」
「先生は何になりたかった?」
「君達の夢が叶えば良いよ」
‹未来図›
しろくほそい指先に
あおい花弁をそっとつける
爪紅みたいときみはずっと
てをひろげて笑っていた
しろくうすい唇に
あかい花弁をなすりつける
口紅みたいときみはずっと
かがみをのぞいて笑っていた
しろくかたいなきがらに
たくさんの花弁をふりちらす
花畑みたいときみのこえは
もうえいえんにきこえない
‹ひとひら›