きらきらと輝くシャンデリア
パチパチ弾ける細身のグラス
ふわり優雅に時々ポップに
代わる代わる跳ね唄う音
一口サイズのケーキを頬張り
そばで優しく微笑む人に
尊敬し敬愛する先輩との
学生生活最後の夜に
少しだけ綺麗に気取って
泣きたいような緊張を隠して
私はこの手を差し出した
‹踊りませんか?›
いつか君の執念が削れ果て
いつか僕の執着が崩れ落ち
そして君が僕以外と出会い
誰かと平穏に笑い合い
真に祝福されるべき幸せを得られたら
そうしたらきっと今度こそ
ただの友として向かい会おう
‹巡り会えたら›
君と再び出会えた事
君と今度こそ手を取り合えた事
穏やかで平凡な日々の中
他愛無いことで笑い合えた事
長い生を最期まで隣に居れた事
僕がずっと願っていた事で
奇跡的な今生だと思ってた事
君がずっと叶えたかった事で
その為に何でも出来てしまった事
不意に現れたその異形が
代償だと嘲笑うまで
その全てを知らなかった事
‹奇跡をもう一度›
黄昏は誰彼、
かわたれは彼誰、
その何方もが薄暗く、
出逢うヒトが誰であるか
確信できない明るさの時間。
だからきちんと誰が分かるまで、
見えた素振りをしてはいけないよ。
と、隣で手を繋ぐ君が言う。
全く見知らぬ君が言う。
酷く熱い掌が
大丈夫だと震えている。
‹たそがれ›
「花が咲くのは?」
「あと1年」
「旅行に行くのは?」
「あと1月」
「空が晴れるのは?」
「あと1週間」
「おやつのケーキは?」
「あと3日」
「幸せなのは?」
「これまでずっと」
‹きっと明日も›
画面がうるさく瞬いている
此方を見てよと瞬いている
換気扇が回っている
気付いて頂戴と回っている
目覚まし時計がないている
早く起きてとないている
白い腕は伸ばされて
そのまま冷たく冷えてかたまり
一つ一つ全部静かにできるまで
綺麗でいてねと嘯いた
‹静寂に包まれた部屋›
「ねえ君、私の君。一つ頼まれてはくれないか」
「なんだい君、私の君。珍しいじゃないか」
「また明日、と。言ってはくれないか」
「君、」
「後生だ、この一度っ切でいい」
「……私は、嘘が言えないよ。知っているだろう」
‹別れ際に›