日に三度
時々もっと
光る画面
未読でごめんね
透ける指先
‹君からのLINE›
神を見た
捧げられた宝玉に触れ
満足に微笑む神を見た
誰もが心奪われ
誰もが魂囚われる
愛しく慈しむ眼差しに
ある人は木を掘った
ある人は機を織った
ある人は弦を鳴らし
ある人は字を連ねた
皆神に焦がれた
あの眼差しを受けるに足る作品を
あの微笑みを間近に受ける僥倖を
心を込めて
魂を削って
命を燃やして
精根尽き果てて尚
神に焦がれた
慈愛に焦がれた
そしてそしてそのくには
神が微笑み歩く宝物庫は
作品以外は何もかも
誰もかも残ってはいない
‹命が燃え尽きるまで›
帰ってこれてよかったね、と言う
よっぽどの悪い噂があったから
あんなところに行くなんて、と言う
お世辞にも良いところじゃなかったから
これからは真っ当に生きなさい、と言う
一応にも若い年齢であったから
でもさ、でもさ、そういうお前ら
私がしんどかったとき、皆見て見ぬふりしたくせに
嘘でも偽善でも紛い物でも抱き締めてくれた、
顧客でも商材でも私を見てくれた、
あの人を、あの人達を、愚弄する資格があるとでも
‹夜明け前›
空を愛し花を愛し
海を愛し星を愛し
光を愛し時を愛し
美しい物ばかり愛する
そんな君が美しいから
どうか僕のことなんか
絶対一生涯全く永遠に
気付かないで下さいな
‹本気の恋›
世間の行事
家族の誕生日
友達の記念日
君との約束
無表情な空白を
塗って貼って描いて潰して
そうして生まれた唯一の
たった一日の真っ白に
僕はその日と決めたのだ
‹カレンダー›
すうすうつめたいよことなり
ひんやりつめたいなめらかさ
なんにもしゃべらなくて
なんにもわらってくれない
さみしいさびしい
よことなりのきみ
それでもそれでも
それでもわたし
きみのしんぞうがほしかった
‹喪失感›
雪の結晶 水の流れ
光の加減に気紛れな風
手を振った君の表情すら
何一つ何一つ変わらない
同じ事など二度と無いのだから
‹世界に一つだけ›