「あ、」
偶然出てきた“それ”は、数年前に突然いなくなった彼から貰ったものだった。
「こんなところに入れてたのか…。」
好きだったなぁ。今どこで何してるのかな。元気かな。連絡もつかなかったからな。新しい彼女、出来てたりするのかなぁ…?
ああ、もう。なんで涙なんて出てくるんだろう。もう吹っ切れたはずだったのに。
彼が突然いなくなってから2年という月日が流れて、私は新しい彼氏が出来た。優しくて、温かくて、あぁ、この人と一緒に色々な景色を見たい、そう思って付き合い始めた。
だけれど付き合ってから彼氏は豹変した。怒鳴ってきた。手をあげてきた。付き合ってから新しい彼氏に愛情を貰った記憶は無い。親友にこれが普通なのかと、私がおかしいのかと、相談した。親友は、普通じゃないよ。あんたはおかしくないよ、って。もう彼氏に好きなんて気持ちはなくて。そんな彼氏と別れたくて、でも何をされるか分からなくて。怖くて。けど勇気を出して言った「別れよう」に「いいよ」の3文字で返された。
初めて付き合ったのは突然いなくなった彼で。そんな彼は不器用でツンデレだけれど、優しくて、確かな愛情をくれた。
彼がくれた“それ”、ふじが描かれた栞は、私が本を読むのが好きだと知った彼が、私の誕生日にくれたものだった。本当は押し花の栞にしたかった、なんて彼が言って。だけど、大好きなあなたから貰うならなんでも嬉しいよ、そう言って本を読む度に使う私を嬉しそうに見ているあなたが好きだった。
花言葉は調べないでね。栞を貰った2日後に、思い出したように言われたその言葉。だけどどうしても花言葉が気になって、言われたことを無視して花言葉を調べてみると「“ ”」なんて、少し重いけど、嬉しい言葉が出てきて。すぐ彼にくっつきに行って、彼から離れたあともずっとにやにやしていた。彼には怪しまれたけど、なんでもない!そう言って誤魔化した。
「こんな言葉贈っておいて…どこに消えたのさ、、」
あぁ。会いたいな。
数年たった今、こんなことを思うのは、2番目に付き合った彼氏が最悪すぎたから。あとは、、偶然出てきた栞に込められた想いが、栞に収まらないくらい大きいから。
「あぁ…もう、」
好きだよ、
“決して離れない”