貝殻ひとつ おかあさんの
貝殻ふたつ おとうさんの
貝殻みっつ わたしの
貝殻よっつ みーちゃんの
貝殻いつつ あいせんせいの
貝殻むっつ えんちょうせんせいの
まだまだいっぱいある
おともだちみんなにくばれるかしら
せかいじゅうのひとみんなにわたせるかも
せかいじゅうのひとみんなとおともだちになれるかな
「貝殻」
引越しなんかしたくない
もう6年生だし仕方ないってわかってるけどやっぱり納得できない
この前学校で西日本と東日本で味付けが違うって聞いた
友達と同じ中学に行くと思ってた
ブレザーの予定だったのに学ランらしい
みんなと連絡先交換出来なかった
東京の人はみんな冷たいって聞く
海だって僕のとこの方が綺麗
空気も汚いってテレビで言ってた
漁師のおじちゃんと同じ船乗るって約束した
ゆうたと夏休みに電車で旅しようって約束したのに
全部全部違うのに
窓から見える海のきらめきだけは僕の町と同じだった
「きらめき」
君は僕の心の灯火に燃料を与えてくれる。
君は「重い」と言うのだろうけど。
君が笑った時、
ありがとうと言ってくれた時、
僕を褒めてくれた時、
僕の灯火は笑っているかのようにふよふよと揺れる。
「心の灯火」
容姿端麗で文武両道のあの子
博識なあいつと仲良くて
そんな2人を見ている僕は
何にも持ってやしなくて
何か身につけようと陸上部に入ったけど
なんの成果も出していない
親父のギターを借りて練習してみても
兄貴に英語を習ってみても
なにも
なにも
その時才色兼備のあの子に声をかけられた
「その絵私好きだよ」
なにもじゃなかったらしい
「不完全な僕」
最悪だ
雨が降っている
降らない予報だったのに
傘も持っていないのに
仕方がないからリュックからバインダーを取り出し、傘代わりにして歩き出す
プラスチックのバインダーに当たる雨音が何となく懐かしくて、もういいかとバインダーを下ろし歩いてみた
小さい頃は雨が好きだった
傘を差すというのが1歩大人になったような気がして晴れの日も傘を差していた
リュックの肩紐をぎゅっと握り、水溜まりの中に入ってみた
あんまり楽しくないなと思ったところでふと思い出した
バシャバシャと足踏みをしていた気がする
ただ入るだけでは面白くないのは当たり前だ
現に靴下まで濡れてぐちょぐちょしていて不愉快だ
試しにその場で軽く足踏みをしてみる
足を下ろすと水が跳ねる
持ち上げると澄んだ水の中で土がふわりと浮かび濁る
じっと観察してるうちに少しだけ楽しくなった
「雨に佇む」