10/21/2022, 1:10:04 PM
「あの葉はいつ枯れて落ちるのだろうか」
イチョウの葉を見て呟いた私に、
小さい声が横から聞こえる。
「秋の終わりには落ちるでしょうね、
気づけば空も高くなりましたから」
そういう君の幼い横顔には老木の様な、
終わりに近づいた時の諦めに似た、落ち着きが見えた。
君はイチョウの葉を見上げて続ける。
「イチョウは良いですね、枯れて落ちる時が一番綺麗で」
純粋な羨望に満ちた声が嫌に悲しかった。
「時期に声も出なくなるそうですよ。
自分の声だけは好きだったんですけどね」
ただ終わりを待つ君は枯葉に似ている。
「せめて声が枯れるまでに落ちれたら良いのに」
秋風が吹いて、薄く色付いた葉を散らしていく。
「あぁ、やっぱり綺麗ですね」
その通りだと、私もそう思った。
#声が枯れるまで
10/20/2022, 11:04:46 AM
始まりはいつも、そういえばこんな朝だった。
何ともない、いつもの道が違って見える。
変わったのは私だけ、それだけでこんなにも美しく見える。
街路樹の葉色はこんなにも青々しかっただろうか。
空の青や木漏れ日の色はこんなにも色鮮やかだっただろうか。
泣き腫らした目に朝日が染みる。
何もかも失った、始まりの朝は清々しい。
また始めよう、そう思える朝だった。
#始まりはいつも
10/19/2022, 11:21:04 AM
すれ違いをしている。
昨日の自分とずっと同じ時間で、
代わり映えのない日常で、同じ様な時を過ごしている。
日付だけが進んでいるような感覚を覚えた。
何かが違ったはずなのだと、言い聞かせて今日を終える。
日付だけが違ってる。
描いた未来ともどこかすれ違っていた。
#すれ違い
10/18/2022, 10:28:41 AM
火葬場の煙突から煙が一つ上がっていく。
秋晴れの空は雲一つなく、黒黒とした煙だけが嫌に際立った。
あれを伝っていくのだろうか、蜘蛛の糸の様に。
どうか切れずにいて欲しいと思った。
#秋晴れ