『ずっと隣で』
どうもうなされているらしい
高熱に見舞われて
うわ言を言う自分を
第三者目線で見下ろしている
「君が遠い」
「君が遠い」
「行かないでくれ」
そんな事を呟いている
…恥ずかしいからやめてくれないか
君の隣に在るだろう
心配そうに見ているじゃないか
自分の声は「僕」には届かない
また憮然と君を見る
あぁ、早く気付かないか
さっさと起きて
隣の手を握ってやれ
『もっと知りたい』
今年初めての日の出を見て
枕草子を思い出す
やうやう白くなりゆく
山際少し明かりて
夜の帳が白んでいく
君も隣で見ているかい
夏の蛍も
かりがねの飛ぶ暮れを
冬の朝の寂しさを
隣で見ているであろう君も
同じ事を考えているかい
君の想いを聞かせてくれ
知らない言葉も噛み砕いて
どうか僕に教えて欲しい
『平穏な日常』
桜は明るすぎるから
色の落ちた月夜を見る
太陽は鮮やかすぎるから
小川に飛び交う蛍を見る
紅葉の錦は絢爛すぎて
落ちる枯葉を見るしかない
雪夜は寂しすぎるから
オリオン座を見上げている
ぽつぽつと
心に咲いては枯れていく
そんなモノクロの日常を
小筆で書いてまとめていく
いつか桜を 太陽を
錦を 雪の降る夜を
真正面から受け止めて
書き連ねることができるよう
季節の流れに乗っていくのだ
『愛と平和』
いいじゃないか今日くらい
満開の夜桜の話を肴に
秋の夜長に呑もうじゃないか
いいじゃないか今日くらい
野に広がる向日葵の鮮やかさを
雪夜に思い出して酔おうじゃないか
季節は巡る
君と共に巡っていく
様々な事を経験して
悲しみも喜びも覚えていった
また満開の桜を
向日葵の鮮やかさも
秋のコオロギの大合唱も
松葉に積もった雪が落ちる音も
いいじゃないか今日くらい
共に思い出を胸に眠ろうじゃないか
『過ぎ去った日々』
太陽が灼いた地面
人に妬いた日
自棄の自分
酒に溺れて
煙草に沈み
ただ書斎で虚空を見る
そんな日々に別れを告げ
書物を少し燃やしてみた
自堕落な自分にサヨナラを
射す光に挨拶を
今日はここまでにしておこう
明日の自分が陽を呼んでいる