やまんば

Open App
8/21/2025, 12:37:41 AM

 この人は、王子様だ。まるで私は救われた姫だった。
 優しく撫でられたその手を覚えておきたいと思った。私が顔の分からない彼に近づく、唯一の手がかりは撫でてくれた手の体温だ。
 私はこの時の胸のときめきをきっと忘れない。そしてまた彼を見つけて私は大きな声で言うんだ。
「あなたを追いかけて来ました!」と。

/きっと忘れない

8/15/2025, 4:58:03 AM

 君が見ていた水平線を、僕も眺めたいと思った。それだけだったのに。そのために、ここに来たのに。
 今日の空はあの日のように真っ赤で落ち着かない。
 不意に僕は、最後の最期まで君が見た景色を見たくなった。どうしようもなかった。焦燥する影が優しい判断をさせてはくれない。そうしてその身を海に放った。
 ほんの少しだけ、君に近づけたようでうれしかった。

/君が見た景色

8/13/2025, 2:17:11 PM


 優しい影は舞う
 風が囁き 星が見守り 海辺が笑う

 言葉にならないものは誰かの心を揺さぶる
 だからこそ、言葉にできない今を大切にする
 

/言葉にならないもの

8/11/2025, 12:32:13 AM

 不意に保健室の匂いがした。ツンとした匂い。
 まさしくそれだと思った。彼女は消毒だ。

 僕の負った心の傷を彼女が消毒する。治すために痛みに耐えないといけないなんて、なんて理不尽なんだ。
 今の僕には彼女の声はしみて痛くて、もうこれ以上優しくしないでほしいと思った。やさしさなんて結局エゴだ。今の僕には消毒も点滴も何もかもがいたかった。

/やさしさなんて

8/9/2025, 12:19:46 AM

 その体温も髪の毛も、何度も想像してきた。今もまだ巨人から頬を叩かれて夢だった!なんてあり得るかもしれない。
 けれど、目を開けた君が嬉しそうに微笑むのが全てだった。夢みたいだけど、夢じゃない。俺にとってそれがどれほどの幸福をもたらすか。どうせこんな事を伝えれば、君はよっポエマーとバカにするから言ってやらないけどね。

/夢じゃない

Next