特別な存在
それは『あなた』だよ
鏡の中の自分を見つめて呟いた
私が私を生きるのに『あなた』は必要不可欠
私は思考、感情を司る心
『あなた』は魂を持つ肉体
切っても切り離せない
特別な存在
あぁ、もうっ!!!
そうよ、気が付いたときには遅かったのよ
あの人の言動ひとつひとつに
いちいち一喜一憂してバカみたい
こんなにもわたしの心が揺さぶられるなんて
ほんと、、、
バカみたいに好きになったじゃない!
久しぶりに誘われたコンパの二次会でカラオケに行くことになった。
そもそもボクは人数合わせなだけで、二次会まで付き合わされるとは思っていなかった。
早く帰りたい、、、
カラオケ開始10分、選曲しているふりをしつつ帰る口実を探していた。
それなのに、、、
真面目に口実を探していたボクを嘲笑うように、不自然な程に何かと理由をつけて仲良さげに男女が次々とカラオケを後にする。
取り残されてしまった、、、
歌い手が居なくなってメロディーだけが流れる部屋の中でひとり呆然と画面を眺めていると突然部屋のドアが開いた。
「あれ?みんな帰っちゃいました??」
店員かと思ったその女性はコンパのメンバーのひとりだった。
お手洗いに行って戻ってきたところだと言い、ボクの向かいの席に着く。
この子のことは覚えている。大人しそうな感じで一次会のときは端に座り、時折会話に交ざりつつ微笑みながら飲んでいた様子が、ボクと同じで仕方なく着いてきた感じがして親近感が湧いていたからだ。
「勝手ですよね、誘っておいて先に帰るんですから」
ボクがやれやれと失笑して言うとその子は
「えっと、、、ごめんなさい、実はわたしがみんなに頼んだの」
顔の前で手を合わせ少し申し訳なさそうに、でもどこか楽しそうな目でボクを見た。
いつの間にか選曲されていた歌は全てなくなり、部屋の中は静かになっていた。
「あなたと、その、、、ふたりぼっちになりたくて、、、」
さっきの悪戯っ子のような顔から、酔いとは違う赤い顔でボソボソと言う彼女を見て、ふっと顔が綻ぶ。
「ふたりぼっち、、、ふたりきりのこと、だよね?ふたりぼっちって言うの可愛いね」
カラオケ開始40分、クスクス笑うボクと更に頬を赤くする彼女。
ふたりぼっちのこの部屋には可愛いキューピッドの罠が仕掛けられていたらしい。
早く
早く、あの手を掴まなきゃ
わたしから遠ざかっていく後ろ姿を
ただひたすらに追いかける
その足は重く
あの人との距離は開くばかり
お願い
わたしに気づいて
立ち止まって振り向いて
夢から醒めるその前に
暖かな風が吹く
芽吹た柔らかい若葉が揺れる
鳥たちは朗らかに歌い
優しい光が世界を包む
あぁ、春がきた
胸が高鳴る、高揚する!
何が始まる予感がする
尻込んでないでさぁ、進もうか
胸が高鳴る方へ