君と僕
手入れされて艶々した黒の綺麗なロングの髪の毛
ブリーチのしすぎでぼさぼさのショートの髪の毛
リボンをつけボタンを留めて綺麗に正された襟元
リボンも失くしてしまいボタンも外れかけの襟元
日常的に使っている様子のある綺麗な付箋とメモ帳
一度も使わず机の中ボロボロの肥やしとなった付箋
学業成就のお守りが一つで綺麗に整えられた鞄
ストラップ類がじゃらじゃらで中身の荒れた鞄
丁寧に綺麗にまとめられているわかりやすいノート
時々白紙の何が書かれているのか分からないノート
自転車の鍵に付けられた黄色のイルカと
水色のイルカ
無造作に切られた黒い髪の毛
どこにいったのかリボンとボタンのない襟元
ぐちゃぐちゃになった筆箱の中で破られた付箋
びちゃびちゃになった鞄
油性ペンで殴り書きの字が書かれたノート
川の底に沈んだ一匹のイルカ
君と僕。
雲り
夜の雲り空が好き。
厚い雲に覆われてるのに
街の灯りが雲に当たって散らばって
いつもの晴れた空より明るく見える。
夜の雲り空が好き。
夕方の雲り空が好き。
部活が終わって帰る時、
夕方のピンクや水色になった空の色が雲に綺麗に写っていて、空が好きなあの子にも見せてあげようと嬉しい気持ちで写真を撮る。
夕方の雲り空が好き。
君と見た景色
燦々輝く太陽の下で虫とりをした草むら
よく他の子と君が滑り台の順番で喧嘩してた公園
ベンチに座りアイスを食べた駄菓子屋
くだらない事を大声で笑いあって怒られた図書館
夕焼けの空の下帰った河川敷の道
憎まれ口を叩きながらゲームで競った君の家
何十年も経ってしまえば、いつかは変わってしまうであろう景色を、僕はいつも目に焼き付けている。
今でも、隣に君がいなくとも、なぞればあの頃の懐かしい気持ちに浸れるこの景色を。
君と見た景色。
透明
私の中身はないです。
光を通して無いように見えるだけですけれど
私の色はないです。
薄くて無いように見えるだけですけれど
私の顔はないです。
私の頭はないです。
私の声はないです。
私の足はないです。
でも全部、無いようにみえるだけです。
中身も、色も、
顔も頭も声も足も
皆を照らして、照り返させて、
色も中身も全部見えるようにしてくれるはずの光
それが、
私に気付きもしないかのように通り過ぎてしまって
本当は私にもあるんです。
中身も、色も。
顔も頭も声も足も全部、あるんです。
ただとても薄くて、光が通り過ぎてしまうだけで
だからどうか、私の中身を、色を
顔を、頭を、声を、足を
私を、見て欲しいのです